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綾小路きみまろ氏インタビュー 愛ある毒舌漫談家が語る老年期の過ごし方

綾小路きみまろ氏が新著について語る

綾小路きみまろ氏が新著について語る

【著者インタビュー】綾小路きみまろ氏/『人生は70代で決まる』/幻冬舎新書/990円

「潜伏期間30年!!」「奥様も選ばれたんだ その顔で」等々、愛ある毒舌や自虐で今や幅広い世代に大人気の綾小路きみまろ氏。「歩くと膝がコキコキ鳴る」古稀を過ぎ、52歳でブレイクしてちょうど20年が経つ今年、さらに10年先、20年先をも見据えて綴ったのが、本書『人生は70代で決まる』だ。

 なぜ70代なのかといえば、多くの場合それが、〈元気に過ごせるラストチャンス〉だから。〈70代は「余生」ではなく、人生の「総仕上げ」です〉〈あの世に召される前の10年間を満足のいくように生きられれば、死ぬ瞬間に「いい人生だった……」といえると思うのです〉

 ゴールを男性の平均寿命に定め、そこから逆算した残り時間をむしろ全力で能動的に楽しもうとする中高年のアイドルは、どんな逆境にも意味や面白みを見出し、笑いに換える、〈肯定〉の名手でもあった。

 まさに〈三つ子の魂〉だ。幼い頃は鹿児島で種付師を営む父とよく牛馬のセリに出かけ、その名調子を周囲が呆れるまで練習し、1964年の東京五輪では「世界中の青空を……」という北出清五郎アナの名台詞に感激。級友の前で物真似を披露し、拍手喝采を浴びた。

「高校卒業後、玉置宏さんに憧れていた18歳の私は、父がくれた1万円を手にまずは東京に出ようと。何の伝手もないのにです。それが新聞配達をしながら大学に通う中、何のご縁かキャバレーの司会の代役を頼まれたり、森進一さんや伍代夏子さんのショーで今の漫談に繋がる時間を頂戴したり。全てが偶然なんですが、その偶然が悉く必然になる他力本願との巡り合わせ、それが私の人生の特徴だなあと、今、思うわけです」

 そんな著者が総仕上げと呼ぶ70代の指南書もまた、〈「老い」が人を一番、成長させる〉〈老人のもの忘れは喜劇〉〈70歳からはプライドを捨てて、カツラだけ残す〉等々、真面目と笑いと毒の配合が絶妙な1冊となった。

 例えば〈心からしたいものを見つけられる〉のが70代とあるが、身軽になりたくともなかなかに捨て難いのが〈義理やモノや名誉〉だ。そんな人には、歳を重ねることは何物にも代えがたい若さを捨てること、それに比べればプライドを捨てるくらい大したことはなく、人間は〈自分でも気がつかないうちに、自然と何かを捨てているのです〉と、むしろ老いを経験できるまで生かされたことへの感謝を発見させてくれるのだ。

 また、SNS等の進化になじめない人は〈時代についていけないくらい成熟している〉と著者一流の言い換えで励まし、〈自分で自分を笑えたら「きみまろレベル」〉〈クヨクヨ悩んでも、時間のムダです〉と、〈これまでで一番自分らしく過ごせる最後の時間〉を自分のために使うよう勧める。

「私は野菜作りが趣味で、オフの日は農作業に勤しみ、大好きな骨董を眺めて過ごしたりしますが、そういう自分のための1人だけの時間って意外と大事だと思うんです。野菜は人にあげても喜んでもらえるし、土と芽と自分だけの世界に一生懸命向き合うのって、なんかイイじゃないですか。

 私はお酒も基本飲みませんし、そんな時間があるならお客様をもっと笑わせるために時間を使いたい。それも結局は自分の世界が大事、他の誰より自分が一番好きということかもしれない。だから何でも面白いと思うことはメモに取り、誰とも似ていない私だけの笑いを確立すべく試行錯誤を重ねてきたわけで、今の私は急にできたわけではないんです。

 若い頃は東京ぼん太さんやケーシー高峰さん、佐々木つとむさんといった先輩方がどう人を笑わせているのか、舞台を見に行って、許可を戴いて録音したものを繰り返し聞いたりもしました。芸に近道はないですからね。私の母の口癖は〈真面目に生きろ〉でしたけど、結構その通りに生きちゃうんだなって。だって私、かなりマジメですもの(笑)」

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