芸能

NHKドラマ、リアルよりファンタジーが主流に?“死者復活”のテーマも登場

柄本佑

柄本佑主演のドラマ『空白を満たしなさい』は「死んだはずの男性が復活」

 6月から新しいクールのドラマが始まり、新作ドラマに視聴者への期待が高まっている。そんななか、にわかに注目を集めているのがNHKのドラマだ。朝ドラや大河ドラマ以外で、現実では起こらない設定のファンタジー作品が増えているのだ。コラムニストでテレビ解説者の木村隆志さんがその理由を解説する。

 * * *
 1週間前の6月25日、ドラマ『空白を満たしなさい』(NHK)がスタートし、7月2日に第2話が放送されます。同作は「3年前に死んだはずの男性がある日復活し、死の理由を自ら追求していく」というファンタジー。

 NHKのドラマと言えば、6月4日に『17歳の帝国』、7日に『正直不動産』、30日に『カナカナ』が終了したばかりです。『17歳の帝国』は、AIに選ばれた少年がある都市の総理大臣になる。『正直不動産』は、不動産の営業マンが嘘のつけない体質になってしまう。『カナカナ』は、心の声が聞こえる少女の物語。『17歳の帝国』はSFの要素こそ濃いものの、広義ではこれらはすべてファンタジー作品と言っていいでしょう。

 各作品の放送枠に注目すると、『空白を満たしなさい』と『17歳の帝国』は土曜22時台の“土曜ドラマ”、『正直不動産』が火曜22時台の“ドラマ10”、『カナカナ』は月~木曜22時45分からの“夜ドラ”。今年1~3月に“ドラマ10”で放送された『しもべえ』も含め、NHKは朝ドラと大河ドラマ以外のドラマ枠で、思い切ったファンタジー作品を次々に放送してきたことがわかるのではないでしょうか。

 もともと公共放送のNHKはドキュメンタリータッチの脚本・演出で、民放各局よりもリアリティを重視した作品が多くを占めていました。現在それとは真逆のファンタジー作品を連発しているのはなぜなのでしょうか。

民放のファンタジーは3つに集約

 まず指摘しておきたいのは、民放各局で放送されているファンタジー作品の大半が「タイムスリップ」「入れ替わり」「生まれ変わり(憑依)」の3つに集約されていること。

「タイムスリップ」は『知ってるワイフ』(フジテレビ系)、『テセウスの船』(TBS系)、『流星ワゴン』(TBS系)など、「入れ替わり」は『天国と地獄~サイコな2人』(TBS系)、『あのときキスしておけば』(テレビ朝日系)、『民王』(テレビ朝日系)など、「生まれ変わり(憑依)」は『妻、小学生になる』(TBS系)、『パパがも一度恋をした』(東海テレビ・フジテレビ系)などが放送されてきました。

 この3つが繰り返し選ばれている最大の理由は単純明快さ。「年齢性別を問わず誰が見てもわかりやすい」「『もしも……』と想像をふくらませられる」ため、視聴率や配信数を得なければいけない民放各局は、この3つを優先的に選んでいるのです。

 一方、冒頭に挙げたNHKのファンタジー作品は、もう一歩踏み込んだ設定とストーリーばかり。視聴率や配信数、スポンサーなどのしがらみが少ないNHKだからこそのチャレンジであり、民放各局と差別化できているため、いずれの作品も一定以上の支持を集めています。

『17歳の帝国』を手がけた制作統括の訓覇圭さんは、「今年度から『NHKワールドJAPAN』を通じて、土曜ドラマ枠がおよそ世界160の国と地域でもご覧いただけることになり、その第一弾になります。NHKのドラマも常時海外へと発信される時がきました。現場の制作者にとっては、とてもとてもありがたい話です。こういった潮目が変わるときにいつも思うことは、『新しいモノを創りたい』ということです。極端に言えば、『目新しいだけ』と揶揄されてもいい、それほど個人的には『新しさ』に魅力を感じてしまいます」とコメントしていました。

 NHKはもちろん民放各局でも見たことのない新しさを求めて作られた作品なのでしょう。その姿勢は素晴らしいものではあることは間違いないものの、やはり果敢な挑戦がしやすいNHKという環境あっての戦略とも言えます。

関連記事

トピックス

遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《女優・遠野なぎこのマンションで遺体発見》近隣住民は「強烈な消毒液の匂いが漂ってきた」「ポストが郵便物でパンパンで」…関係者は「本人と連絡が取れていない」
NEWSポストセブン
盟友である鈴木容疑者(左・時事通信)への想いを語ったマツコ
《オンカジ賭博で逮捕のフジ・鈴木容疑者》「善貴は本当の大バカ者よ」マツコ・デラックスが語った“盟友への想い”「借金返済できたと思ってた…」
NEWSポストセブン
フリー転身を発表した遠野なぎこ(本人instagramより)
「救急車と消防車、警官が来ていた…」遠野なぎこ、SNSが更新ストップでファンが心配「ポストが郵便物でパンパンに」自宅マンションで起きていた“異変”
NEWSポストセブン
モンゴルを訪問される予定の雅子さま(撮影/JMPA)
雅子さま、「灼熱のモンゴル8日間」断行のご覚悟 主治医とともに18年ぶりの雪辱、現地では角界のヒーローたちがお出迎えか 
女性セブン
米田
《チューハイ2本を万引きで逮捕された球界“レジェンド”が独占告白》「スリルがあったね」「棚に返せなかった…」米田哲也氏が明かした当日の心境
週刊ポスト
詐称疑惑の渦中にある静岡県伊東市の田久保眞紀市長(左/Xより)
「『逃げも隠れもしない』と話しています」地元・伊東市で動揺広がる“学歴詐称疑惑” 田久保真紀市長は支援者に“謝罪行脚”か《問い合わせ200件超で市役所パンク》
NEWSポストセブン
佐々木希と渡部建
《六本木ヒルズ・多目的トイレ5年後の現在》佐々木希が覚悟の不倫振り返り…“復活”目前の渡部建が世間を震撼させた“現場”の動線
NEWSポストセブン
東川千愛礼(ちあら・19)さんの知人らからあがる悲しみの声。安藤陸人容疑者(20)の動機はまだわからないままだ
「『20歳になったらまた会おうね』って約束したのに…」“活発で愛される女性”だった東川千愛礼さんの“変わらぬ人物像”と安藤陸人容疑者の「異変」《豊田市19歳女性殺害》
NEWSポストセブン
児童盗撮で逮捕された森山勇二容疑者(左)と小瀬村史也容疑者(右)
《児童盗撮で逮捕された教師グループ》虚飾の仮面に隠された素顔「両親は教師の真面目な一家」「主犯格は大地主の名家に婿養子」
女性セブン
組織が割れかねない“内紛”の火種(八角理事長)
《白鵬が去って「一強体制」と思いきや…》八角理事長にまさかの落選危機 定年延長案に相撲協会内で反発広がり、理事長選で“クーデター”も
週刊ポスト
たつき諒著『私が見た未来 完全版』と角氏
《7月5日大災害説に気象庁もデマ認定》太陽フレア最大化、ポピ族の隕石予言まで…オカルト研究家が強調する“その日”の冷静な過ごし方「ぜひ、予言が外れる選択肢を残してほしい」
NEWSポストセブン
大阪・関西万博で、あられもない姿をする女性インフルエンサーが現れた(Xより)
《万博会場で赤い下着で迷惑行為か》「セクシーポーズのカンガルー、発見っ」女性インフルエンサーの行為が世界中に発信 協会は「投稿を認識していない」
NEWSポストセブン