ライフ

結城真一郎氏インタビュー「新しいミステリの可能性を開拓していけたら」

結城真一郎氏が新作について語る

結城真一郎氏が新作について語る

【著者インタビュー】結城真一郎氏/『#真相をお話しします』/新潮社/1705円

 科学技術や社会の進展は、新たな動機をも生む──。だとすればミステリは書き尽くされるどころか、今後も無限の地平を秘めるはずだと、平成生まれ初の日本推理作家協会賞受賞者、結城真一郎氏(31)は言う。

 本書『#真相をお話しします』は件の推協賞受賞作「#拡散希望」や、「人生で初めて書いた短編」にして本格ミステリ作家クラブの年間アンソロジーにも収録された「惨者面談」など、全5作を収めた最新短編集。YouTubeやリモート飲み会、精子提供やパパ活といった題材の禍々しさもさることながら、それらがもたらす新たな歪みが人々の意識や日常を人知れず脅かしていく様に、私たち読者は何よりゾッとさせられるのだ。

 しかもその肝心の真相も安直な推理にはやる読者を嘲笑うかのように二転三転し、〈切れ味最凶〉との帯の文句は、全く伊達ではない。

「今回は伏線の1つや2つ見抜かれてもビクともしない、全貌はたぶん見抜けませんからって、余裕綽々で待ち構える構成に、あえて挑んだ部分があって。確かにここは伏線ですけど、それが何か? って、手の内を曝してなお仰天できるエンタメをめざしました」

 開成高校出身で東大法学部卒。新作を出す傍から評価を集める〈ミステリ界の超新星〉は、幼い頃からお話を読むことより、作ることの方に興味があったとか。

「物心ついた頃から、読み聞かされた本に触発されて漫画やお話を書いたり、作る方は結構熱心でした。読む方は特に本の虫ということもなく、平均より多少読んでいた程度だと思います。

 唯一なりたいのが作家で、いずれ作家になると公言しつつ、そんな人間も珍しいだろうと高を括っていたら、いたんですよ。完全に同学部同学年の辻堂ゆめさんがこのミス大賞優秀賞を取り、デビューされた。それからですね。自分がバイトと飲み会しかしていない間に作品を完成させた同級生がいるのに、自分は何だと。本気で書けよって、ようやく火が付いた。それくらい本当にろくでもない大学生活だったもので(苦笑)」

 とは言いながら、例えば冒頭「惨者面談」は自身の経験が絶妙に生きた1篇だ。

 社長の〈宮園さん〉率いる創業8年、正社員僅か1名の家庭教師派遣会社で営業を担当する僕こと〈片桐〉は、現役東大生。同社ではそもそも4人のアルバイト営業マン全員が名門中学出身の現役学生で、中でも麻布から東大という片桐の経歴は受験生垂涎の切り札。彼としても入会を検討中の家庭に乗り込み、〈いわゆる“教育ママ・パパ”たちを相手にしのぎを削る毎日はスリリングだった〉。

「僕も彼とほぼ同じ仕事をしていたので、この台詞はほぼエッセイです(笑)」

関連キーワード

関連記事

トピックス

林家ペーさんと林家パー子さんの自宅で火災が起きていることがわかった
《部屋はエアコンなしで扇風機が5台》「仏壇のろうそくに火をつけようとして燃え広がった」林家ぺー&パー子夫妻が火災が起きた自宅で“質素な暮らし”
NEWSポストセブン
1年ほど前に、会社役員を務める元夫と離婚していたことを明かした
《ロックシンガー・相川七瀬 年上夫との離婚明かす》個人事務所役員の年上夫との別居生活1年「家族でいるために」昨夏に自ら離婚届を提出
NEWSポストセブン
林家ペーさんと林家パー子さんの自宅で火災が起きていることがわかった
「パー子さんがいきなりドアをドンドンと…」“命からがら逃げてきた”林家ペー&パー子夫妻の隣人が明かす“緊迫の火災現場”「パー子さんはペーさんと救急車で運ばれた」
NEWSポストセブン
豊昇龍
5連勝した豊昇龍の横綱土俵入りに異変 三つ揃いの化粧まわしで太刀持ち・平戸海だけ揃っていなかった 「ゲン担ぎの世界だけにその日の結果が心配だった」と関係者
NEWSポストセブン
“高市潰し”を狙っているように思える動きも(時事通信フォト)
《前代未聞の自民党総裁選》公明党や野党も“露骨な介入”「高市早苗総裁では連立は組めない」と“拒否権”をちらつかせる異例の事態に
週刊ポスト
韓国アイドルグループ・aespaのメンバー、WINTERのボディーガードが話題に(時事通信フォト)
《NYファッションショーが騒然》aespa・ウィンターの後ろにピッタリ…ボディーガードと誤解された“ハリウッド俳優風のオトコ”の「正体」
NEWSポストセブン
立場を利用し犯行を行なっていた(本人Xより)
【未成年アイドルにわいせつ行為】〈メンバーがみんなから愛されてて嬉しい〉芸能プロデューサー・鳥丸寛士容疑者の蛮行「“写真撮影”と偽ってホテルに呼び出し」
NEWSポストセブン
佳子さまを撮影した動画がXで話題になっている(時事通信フォト)
《佳子さまどアップ動画が話題》「『まぶしい』とか『神々しい』という印象」撮影者が振り返る “お声がけの衝撃”「手を伸ばせば届く距離」
NEWSポストセブン
交際が報じられた赤西仁と広瀬アリス
《赤西仁と広瀬アリスの海外デートを目撃》黒木メイサと5年間暮らした「ハワイ」で過ごす2人の“本気度”
NEWSポストセブン
個別指導塾「スクールIE」の元教室長・石田親一容疑者(公式サイトより※現在は削除済み)
《15歳女子生徒にわいせつ》「普段から仲いいからやっちゃった」「エスカレートした」“やる気スイッチ”塾講師・石田親一容疑者が母親にしていた“トンデモ言い訳”
NEWSポストセブン
秋場所
「こんなことは初めてです…」秋場所の西花道に「溜席の着物美人」が登場! 薄手の着物になった理由は厳しい暑さと本人が明かす「汗が止まりませんでした」
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 「高市総理を阻止せよ」イカサマ総裁選の裏ほか
「週刊ポスト」本日発売! 「高市総理を阻止せよ」イカサマ総裁選の裏ほか
NEWSポストセブン