スポーツ

プロ転向表明した羽生結弦 心理士が語る会見で見えた“心の内”

記者会見するフィギュアスケートの羽生結弦(EPA=時事)

記者会見するフィギュアスケートの羽生結弦(EPA=時事)

 臨床心理士・経営心理コンサルタントの岡村美奈さんが、気になったニュースや著名人をピックアップ。心理士の視点から、今起きている出来事の背景や人々の心理状態を分析する。今回は、プロ転向を表明したフィギュアスケートの羽生結弦(27才)について。

 * * *
 フィギュアスケートの羽生結弦選手が競技から引退というニュースに、思わず「え~っ?」という驚嘆とも悲鳴ともつかない声を上げた。おそらく全国各地いや世界各地で、同じような声を上げたファンが数多くいたのではないだろうか。

 7月19日、羽生選手が都内のホテルで「決意表明」の記者会見を行った。羽生選手が決意表明の場と称したように、これまで多くのアスリートたちが行ってきた“引退”会見とは印象がかなり違っていた。引退という言葉は嫌いだと語り、ステージを変えると表明した会見は、彼の強い決意に満ちたものだった。

 会場に現れた羽生選手は、フォーマル感のある黒っぽいスーツにシルバーグレーのネクタイという組み合わせ。シルバーグレーは、理想の高さや鋭い感性、冷静な判断力をイメージさせる色といわれる。そのため理想とするフィギュアスケートの形を追い求め、次のステージに進むという羽生選手の決意を表すような色でもある。

 マイクの前に着席した時は、いつもと違いかなり緊張していたようだ。「しがない自分なので、言葉使いが悪かったり、噛んだりしても許して下さい」と述べて、はにかむように笑った。その言葉通り、最初のうちは少々言葉を噛む場面も見られたが、質疑応答になると、自分の思うところを滑らかな口調で伝えていた。羽生選手の話し方はいつも柔らかく穏やかながら、試合前後の会見になると、ピリピリと張りつめた感じが語気や表情から伝わってきたものだ。だが今回の会見では、そのような緊迫感は感じられなかった。迷いや不安が一切ないのだろう。どこまでも冷静で落ち着いていた。

 今後、競技会に出場することはなく、プロのアスリートとしてスケートを続けると表明した会見で頻繁に用いられていたのは、“挑戦を続ける”“闘い続ける”“闘い抜く”“4回転半ジャンプに挑戦する”“成功させる”“期待してもらえる”、そして“努力”“頑張って”という言葉だ。口調は柔らかいが、語った言葉は強いものばかりであり、まるで挑戦者のそれだ。アスリートたちの引退会見ではほとんど聞くことがない言葉から、次なるステージへの挑戦はここからがスタートだという彼の決意の固さがわかる。

関連キーワード

関連記事

トピックス

高級寿司店でトラブルが拡散されたA子さん(寿司の写真は本人SNSより)
《高級寿司店と炎上の港区女子に騒動後を直撃》「Xの通知が一生鳴り止まないんじゃないか」大将と和解後の意外な関係
NEWSポストセブン
小倉優子
小倉優子、早々の「大学留年宣言」がおいしすぎる理由 「女子大生+ママ」の二刀流は唯一無二、ゆくゆくは企業の役員の道も?
NEWSポストセブン
現地でくばられたノアさん関連のビラ(時事通信フォト)
《人質らが証言する劣悪環境》ボーイフレンドの目の前でハマスに拐われた26歳女性の救出に成功も「体重激減」「ゴミ箱で排泄」の惨状
NEWSポストセブン
6月9日、鹿児島市内の認定こども園で、刃物のようなもので男児の首を切りつけて出血させたとして、殺人未遂容疑で逮捕された笹山なつき容疑者(21)
《鹿児島2歳児切りつけ》「見えたらいけないものが…」21歳の女性保育士が犯行前にSNSで意味深投稿 母校の高校関係者は「夢の実現目指して熱心に勉強を」
NEWSポストセブン
一時は食欲不振で食事もままならなかったという(4月、東京・清瀬市。時事通信フォト)
紀子さま“体調不良報道”でも気丈な姿、単独公務先で「こちらにどうぞ」と気さくに声かける お元気そうな様子に同行していた記者たちは驚き
週刊ポスト
大学受験に向けて動き出されている悠仁さま(写真/JMPA)
悠仁さまの東大受験に暗雲、推薦枠での入学には極めて高いハードル 進学先候補に東京農業大学、玉川大学、筑波大学
週刊ポスト
中村芝翫と三田寛子
三田寛子、夫・中村芝翫と愛人の“半同棲先”に怒鳴り込んだ「絶妙タイミング」 子供たちも大事な時期だった
週刊ポスト
【全文公開】中村七之助、梨園きってのモテ男が“実家お泊り愛”の真剣交際 お相手は京都の芸妓、直撃に「ありがとうございます」
【全文公開】中村七之助、梨園きってのモテ男が“実家お泊り愛”の真剣交際 お相手は京都の芸妓、直撃に「ありがとうございます」
女性セブン
全国ライブ中の沢田研二
《ファンの声援にブチ切れ》沢田研二が「見てわからんか!」とステージ上で激怒し突っ込んだ「NGワード」
NEWSポストセブン
長所は「どこでも寝られるところ」だと分析された(4月、東京・八王子市。時事通信フォト)
愛子さま、歓迎会の翌日の朝に遅刻し「起きられませんでした」と謝罪 “時間管理”は雅子さまと共通の課題
NEWSポストセブン
中村芝翫と三田寛子
《愛人との半同棲先で修羅場》それでも三田寛子が中村芝翫から離れない理由「夫婦をつなぎとめる一通の手紙」
NEWSポストセブン
日本中を震撼させた事件の初公判が行われた
【悲劇の発端】瑠奈被告(30)は「女だと思ってたらおじさんだった」と怒り…母は被害者と会わないよう「組長の娘」という架空シナリオ作成 ススキノ事件初公判
NEWSポストセブン