生殖補助医療による出生数は10年で2.8倍に
今回の制度改革において、女性のみならず男性不妊治療における保険適用範囲も拡大した。例えば男性側で精巣から手術によって精子を採取する「精巣内精子採取術(microTESE)」や、性機能改善薬「バイアグラ」にも保険が適用となる。
そんな「男性不妊」にクローズアップした漫画『不妊男子』(小学館ビッグコミックスペリオールWEBレーベル・ダルパナ連載中、各電子書店で配信)の第2話(単行本第1巻収録)では、主人公の男(マサカズ)が初めての精子検査に挑むシーンがある。臨場感が伝わってくるその場面について、著者の玄黄武(げんこうぶ)さんが語る。
「実際、私も、不妊治療で体験できることは、必ず取材しようと心がけています。その一例ですが、男性クリニックで精子検査を受けました。本やネットで調べただけでは表現できない”生々しさ”を体感しました。他にも、女性クリニックの「不妊治療合同説明会」に参加する機会があって、作品には自分がその説明会で感じた疑問や関心をそのまま投影しました。もし自分が読者ならば、漫画ではキャラクターたちのドラマが読みたいし、やはり有意義な情報も欲しい、と思います。ですから作品を描くうえで『夫婦のドラマ』と『医療情報』の両輪が、バランスよく走るように気を付けています」
作品を描くうえで様々な人へ綿密な取材を行い、リアルさを追求しているというのだ。
「不妊治療を経験した女性にも話をうかがいました。取材当日、個人的でセンシティブなお話のため、私は非常に緊張していました。
女性は丁寧にファイルされた資料を手元に置いて、『数年前の出来事です』と笑顔で話し始め、和やかに取材が進みました。女性は不妊治療を受け、着床も上手くいき、全てが順調だった矢先、流産されたそうです。沈黙した女性を恐る恐る見ると、涙が零れないように天を仰いでいました。『流産したのは私のせいかもしれない、本当にごめんね。ずっと忘れないよ…そんな思いを抱きました』と、時間を経てもその時の感情がよみがえると吐露されました。
男性である私は、『その感情はわかります』などと容易に共感を示せませんでした。『いのちを体に宿す』ことは男にはできない、そんな当たり前な壁に、ぶち当たった気持ちになりました」
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