国内

不法滞在外国人が亡くなったときどうやって母国へ返す?過去の事件から振り返るその難しさ

遺骨の移送を負担する仕組みはない(イメージ)

遺骨の移送を負担する仕組みはない(イメージ)

 警察や軍関係、暴力団組織などの内部事情に詳しい人物、通称・ブラックテリア氏が、関係者の証言から得た驚くべき真実を明かすシリーズ。今回は、過去の事件を振り返り、不法滞在の外国人が事件や事故に巻き込まれ亡くなったあとの遺骨の移送に関する難しさについて。

 * * *
 その遺体は都内のあるアパートの部屋の押し入れから、白骨化した状態で見つかった。10年以上前のことだ。発見された遺体は不法残留の外国人男性。同居していた女性に殺害されていたのだ。事件を担当した捜査員たちが事件解決に向け、捜査を行ったのはもちろんだが、彼らは白骨化した遺体を母国に帰国させるためも動かなければならなかった。

 日本の法律では、白骨化した遺体であっても、火葬してから収骨しなければならないという。そして、オーバーステイなどで不法滞在になっている外国人が死亡した場合は行旅死亡人という扱いになり、遺体については亡くなった場所の自治体が担当することになる。事件や事故で警察が関わる場合も、原則としてそれは変わらず、どこの国の人か分かる場合には大使館に身元の照会をかけながら、遺族の意向をくみとりつつ火葬や埋葬を行うこともあり、そのために計上されている予算の中で手続きをしている。

 荼毘に付すのはいいが、ここで問題が生じてくる。「収骨したお骨を、どのように母国で待つ家族の元へ返せばいいのか、(前述の白骨化した状態で見つかった外国人男性の事件を担当した)捜査員たちにはわからなかった」と、事件の捜査関係者は話す。行旅死亡人として自治体は、火葬はできるが、母国へ送る費用は負担できないという。

 遺体でも遺骨でも日本から母国へ移送するには、当該国によって定められた手続きと書類が必要になる。遺体の場合は、遺体として出国するための書類、母国で提出する死亡届を出すための書類が必要となり、当該国によってはその国の大使館や領事館の認証が必要になる。亡くなった訪日外国人が社会保険や旅行保険など何らかの保険に加入していれば、保険会社がその費用を持ち、保険会社から依頼された葬儀会社などが書類の準備や手続きを行うのが常である。だが被害者は不法残留者だったため、保険などは何一つかけていなかった。

 保険がなくとも、正規にビザを取得して滞在している外国人が死亡した場合、国の費用で家族を日本に行かせたり、国が火葬費用等を出したりすることができる国もあるという。しかし、いかに自国の国民が日本で亡くなったとしても、不法滞在者であった場合は、移送に関する費用が出ないことが少なくない。このため不法滞在者は誰かが(家族であることが多いが)費用を負担しないかぎり、移送することが難しくなる。国によっては、自国民であっても、不法滞在者として死亡し、その死が変死扱いになった場合は、火葬も埋葬も関知しないという国もあるらしい。

関連キーワード

関連記事

トピックス

中核派の“ジャンヌ・ダルク”とも言われるニノミヤさん(仮称)の壮絶な半生を取材した
高校時代にレイプ被害で自主退学に追い込まれ…過去の交際男性から「顔は好きじゃない」中核派“謎の美女”が明かす人生の転換点
NEWSポストセブン
スカイツリーが見える猿江恩賜公園は1932年開園。花見の名所として知られ、犬の散歩やウォーキングに訪れる周辺住民も多い(写真提供/イメージマート)
《中国の一部では夏の味覚の高級食材》夜の公園で遭遇したセミの幼虫を大量採取する人たち 条例違反だと伝えると「日本語わからない」「ここは公園、みんなの物」
NEWSポストセブン
白石隆浩死刑囚
《死刑執行》座間9人殺害の白石死刑囚が語っていた「殺害せずに解放した女性」のこと 判断基準にしていたのは「金を得るための恐怖のフローチャート」
NEWSポストセブン
手を繋いでレッドカーペットを歩いた大谷と真美子さん(時事通信)
《「ダサい」と言われた過去も》大谷翔平がレッドカーペットでイジられた“ファッションセンスの向上”「真美子さんが君をアップグレードしてくれたんだね」
NEWSポストセブン
ゆっくりとベビーカーを押す小室さん(2025年5月)
《小室圭さんの赤ちゃん片手抱っこが話題》眞子さんとの第1子は“生後3か月未満”か 生育環境で身についたイクメンの極意「できるほうがやればいい」
NEWSポストセブン
『国宝』に出演する横浜流星(左)と吉沢亮
大ヒット映画『国宝』、劇中の濃密な描写は実在する? 隠し子、名跡継承、借金…もっと面白く楽しむための歌舞伎“元ネタ”事件簿
週刊ポスト
中核派の“ジャンヌ・ダルク”とも言われるニノミヤさん(仮称)の壮絶な半生を取材した
【独占インタビュー】お嬢様学校出身、同性愛、整形400万円…過激デモに出没する中核派“謎の美女”ニノミヤさん(21)が明かす半生「若い女性を虐げる社会を変えるには政治しかない」
NEWSポストセブン
山本アナ
「一石を投じたな…」参政党の“日本人ファースト”に対するTBS・山本恵里伽アナの発言はなぜ炎上したのか【フィフィ氏が指摘】
NEWSポストセブン
今年の夏ドラマは嵐のメンバーの主演作が揃っている
《嵐の夏がやってきた!》相葉雅紀、櫻井翔、松本潤の主演ドラマがスタート ラストスパートと言わんばかりに精力的に活動する嵐のメンバーたち、後輩との絡みも積極的に
女性セブン
白石隆浩死刑囚
《女性を家に連れ込むのが得意》座間9人殺害・白石死刑囚が明かしていた「金を奪って強引な性行為をしてから殺害」のスリル…あまりにも身勝手な主張【死刑執行】
NEWSポストセブン
ベビーシッターに加えてチャイルドマインダーの資格も取得(横澤夏子公式インスタグラムより)
芸人・横澤夏子の「婚活」で学んだ“ママの人間関係構築術”「スーパー&パークを話のタネに」「LINE IDは減るもんじゃない」
NEWSポストセブン
LINEヤフー現役社員の木村絵里子さん
LINEヤフー現役社員がグラビア挑戦で美しいカラダを披露「上司や同僚も応援してくれています」
NEWSポストセブン