「弁護人が、集まった署名をもとに『これだけ寛大な処分を求める人々がいる』と主張することで、裁判に多少は影響することもあるかもしれません。ただ、最終的にどれだけの署名が集まるかも不明ですし、今回の署名運動に関しては何とも言えない状況です」
そもそも山上容疑者にはどれほどの刑が求められそうなのか? 郷原氏は「被害者がひとりである以上、無期懲役が妥当でしょう」と指摘する。
「よほど残虐な方法がとられた場合は、殺人事件の被害者がひとりでも死刑判決が出る可能性がありますが、今回の事件はそのケースにあたらないはずです。『元総理の命は一般人の命よりも重いから、被害者ひとりでも死刑だ』なんていう判断はできません。
もしも加害者が国家転覆など内乱罪に近いような目的を持っていたなら話はまた変わってきますが、現時点で伝わってくる供述内容からすると、山上容疑者の動機の中心にあるのは、あくまで旧統一教会に対する恨みと見られます。『旧統一教会への憎しみにより安倍元総理に殺意を向けた』という点に飛躍は感じられますが、安倍氏が旧統一教会系のイベントにビデオメッセージを送ったことなどを『彼らにお墨付きを与えた』のように捉えたのなら、その主張も理解できない理由ではありません」
今の段階で減刑嘆願への署名活動が起きるというのは、それだけ山上容疑者への判決に注目が集まっている証拠とも言える。前代未聞の事件の捜査はまだ始まったばかりだ。