霊感商法被害をめぐって会見する紀藤弁護士(写真は2007年/時事通信フォト)

霊感商法被害をめぐって会見する紀藤弁護士(写真は2007年/時事通信フォト)

先人は坂本弁護士

 弁護士として旧統一教会を相手にすることのリスクは大きい。紀藤氏は「圧力は感じないようにしてはいるが、嫌がらせや脅迫じみた行為はしょっちゅうです」と言う。

「名誉毀損等で訴えられるリスクもあります。実際、他のカルト的団体のケースですが、何度か裁判を起こされたこともあります。

 僕らの先人である坂本堤弁護士は、1989年にオウム真理教に家族ごと殺害されている。危険を感じる時は電車に乗らずタクシーに乗るとか、後ろを振り返るとか、そういうことを常に心がけています。

 これまで、僕が所属する全国霊感商法対策弁護士連絡会は、統一教会問題について、政府、行政、警察、国税などに呼びかけをしても、結局宗教という名の隠れ蓑に皆が及び腰で、手をつけなかった。この空白期間に生まれた悲しみは、我々が負わなければいけない問題だと思っています」

 それでも、“空白の30年”の地道な活動は、今に生きている。

「統一教会が宗教法人名を変える時、直前に我々が下村博文・元文科大臣宛てに『変えないでください』という申し入れ書を出していたから、変更した事実の問題性が明らかになった。安倍元首相を含め他の国会議員にも、前々から『統一教会関連の活動に加担しないでください』と連絡していたから、彼らと教会とのつながりを『知らないとは言わせない』と今言うことができる。

 日本は1990年代にオウム事件を経験したにもかかわらず、カルト的宗教団体の問題として教訓を活かさず、霊感商法の問題だけでなく家族問題など、多くの社会問題を生んでいます。統一教会問題はここで清算しなければ、後世の日本人に申し訳ないと思っています」

【プロフィール】
紀藤正樹(きとう・まさき)/1960年生まれ、山口県出身。1990年に第二東京弁護士会に登録。「霊感商法」被害に取り組む全国霊感商法対策弁護士連絡会に所属し、2001年にリンク総合法律事務所を開設した。著書に『マインド・コントール』(アスコム)など。

※週刊ポスト2022年9月2日号

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