関西では同期の武豊騎手がGIを5勝し、早々とリーディングジョッキーになっていたこともあったのかもしれませんが、新聞には蛯名正義はなかなか重賞を勝てないと書かれたりしました。自分では焦りはないつもりでしたが、置いていかれちゃいけないという思いはありました。でも勝ちたいと思えば思うほど、勝利から見離されていくみたいな感じでしたね。
初めての重賞勝ちは22歳の時、1992年2月のフェブラリーハンデ(現在のGIフェブラリーステークス)です。勝って肩の荷が下りたっていうか、もう「重賞を勝てない」なんて言われなくなるなって(笑)。自分の自信にもなって、この年54勝と勝ち星も一気に増え、2018年まで27年連続で重賞を勝ち続けることができました。
ということで、僕はジョッキーって気持ちとかきっかけ一つなんだということを体感しています。手の合う馬に巡り合えるかどうか、そのチャンスを活かすか活かさないかというところではないでしょうか。なかなか結果の出ないジョッキーも急に伸びることがありますので、そこを見てあげてほしいですね。そういう「変身」を先取りすることで、大きな馬券が獲れるかもしれません(笑)。
【プロフィール】
蛯名正義(えびな・まさよし)/1987年の騎手デビューから34年間でJRA重賞はGI26勝を含む129勝、通算2541勝。エルコンドルパサーとナカヤマフェスタでフランス凱旋門賞2着など海外でも活躍、2010年にはアパパネで牝馬三冠も達成した。2021年2月で騎手を引退、2022年3月に52歳の新人調教師として再スタートした。
※週刊ポスト2022年9月2日号