芸能

吉田拓郎、井上陽水、小田和正…1940年代生まれの3人が70年代に果たした功績

音楽評論家のスージー鈴木氏が吉田拓郎、井上陽水、小田和正の功績について語る

音楽評論家のスージー鈴木氏が吉田拓郎、井上陽水、小田和正の功績について語る

 それまで誰も聴いたことのなかったメロディに、誰も使わなかった言葉をのせ、唯一無二の歌声で颯爽と登場した吉田拓郎、井上陽水、小田和正──日本の音楽シーンをリードし続けてきた3人が1970年代に果たした輝かしき功績について、音楽評論家のスージー鈴木氏が語る。

 * * *
 現在のJポップの隆盛は、吉田拓郎、井上陽水、小田和正の1940年代生まれの3人が果たした功績と、彼らが大ブレイクした70年代を抜きには語れません。

 吉田拓郎はデビュー曲『イメージの詩』(1970年)で、それまでの若者が聞いたことがなかったような普段着の言葉と飾らないメロディを引っさげて音楽シーンに登場しました。60年代に人気を博したクラシカルでエレガントなグループサウンズとは異なる、心の奥底をさらけ出すような言葉遣いは拓郎が持ち込んだと言っても過言ではありません。

 若者にギターを持たせ、「自分の言葉で歌っていいんだ」と思わせたのは、拓郎の最も大きな功績です。桑田佳祐も拓郎から大きな影響を受けた1人であり、日本人が自分の言葉で歌詞を書き、メロディを作って歌う「Jポップ」の礎を作ったのが拓郎と言えます。

 拓郎が先鞭を付け、その流れに乗り、当時のフォークやニューミュージックは売れると実証したのが、拓郎の2歳下の井上陽水でした。『氷の世界』(1973年)は、抜群の歌唱力と日本人の琴線に触れる言葉遣いで日本初のミリオンセラーアルバムとなり莫大なレコードセールスで音楽マーケットをさらに広げました。後のJポップにつながるビジネスの基盤を完成させた人として位置づけられると思います。

 小田和正は陽水の1歳上でデビューは70年と早かったのですが、オフコースがブレイクしたのは『愛を止めないで』『さよなら』が大ヒットした79年。歌詞の世界に女性的な切なさを持ち込みながら、拓郎と陽水が築いてきたマーケットの上で、歌詞や音の水準を究極まで高めた職人だと私は感じます。

【プロフィール】
スージー鈴木(すーじー・すずき)/1966年生まれ、大阪府出身。音楽評論家、小説家、ラジオDJ。昭和歌謡から最新曲まで守備範囲が広く、『EPICソニーとその時代』(集英社新書)、『桑田佳祐論』(新潮新書)など著書多数。

取材・文/上田千春

※週刊ポスト2022年9月2日号

多くの人を魅了してきた井上陽水(写真/共同通信社)

多くの人を魅了してきた井上陽水(写真/共同通信社)

関連キーワード

関連記事

トピックス

趣里と父親である水谷豊
《趣里が結婚発表へ》父の水谷豊は“一切干渉しない”スタンス、愛情溢れる娘と設立した「新会社」の存在
NEWSポストセブン
SNS上で「ドバイ案件」が大騒動になっている(時事通信フォト)
《ドバイ“ヤギ案件”騒動の背景》美女や関係者が証言する「砂漠のテントで女性10人と性的パーティー」「5万米ドルで歯を抜かれたり、殴られたり」
NEWSポストセブン
事業仕分けで蓮舫行政刷新担当大臣(当時)と親しげに会話する玉木氏(2010年10月撮影:小川裕夫)
《キョロ充からリア充へ?》玉木雄一郎代表、国民民主党躍進の背景に「なぜか目立つところにいる天性の才能」
NEWSポストセブン
“赤西軍団”と呼ばれる同年代グループ(2024年10月撮影)
《赤西仁と広瀬アリスの交際》2人を結びつけた“軍団”の結束「飲み友の山田孝之、松本潤が共通の知人」出会って3か月でペアリングの意気投合ぶり
NEWSポストセブン
米利休氏とじいちゃん(米利休氏が立ち上げたブランド「利休宝園」サイトより)
「続ければ続けるほど赤字」とわかっていても“1998年生まれ東大卒”が“じいちゃんの赤字米農家”を継いだワケ《深刻な後継者不足問題》
NEWSポストセブン
田村容疑者のSNSのカバー画像
《目玉が入ったビンへの言葉がカギに》田村瑠奈の母・浩子被告、眼球見せられ「すごいね。」に有罪判決、裁判長が諭した“母親としての在り方”【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン
アメリカから帰国後した白井秀征容疑(時事通信フォト)
「ガイコツが真っ黒こげで…こんな残虐なこと、人間じゃない」岡崎彩咲陽さんの遺体にあった“異常な形跡”と白井秀征容疑者が母親と交わした“不穏なメッセージ” 〈押し入れ開けた?〉【川崎ストーカー死体遺棄】
NEWSポストセブン
赤西と元妻・黒木メイサ
《赤西仁と広瀬アリスの左手薬指にペアリング》沈黙の黒木メイサと電撃離婚から約1年半、元妻がSNSで吐露していた「哺乳瓶洗いながら泣いた」過去
NEWSポストセブン
元交際相手の白井秀征容疑者からはおびただしい数の着信が_(本人SNS/親族提供)
《川崎ストーカー死体遺棄》「おばちゃん、ヒデが家の近くにいるから怖い。すぐに来て」20歳被害女性の親族が証言する白井秀征容疑者(27)の“あまりに執念深いストーカー行為”
NEWSポストセブン
不倫疑惑が報じられた田中圭と永野芽郁
《永野芽郁のほっぺたを両手で包み…》田中圭 仲間の前でも「めい、めい」と呼ぶ“近すぎ距離感” バーで目撃されていた「だからさぁ、あれはさ!」
NEWSポストセブン
連日お泊まりが報じられた赤西仁と広瀬アリス
《広瀬アリスと交際発覚》赤西仁の隠さないデートに“今は彼に夢中” 交際後にカップルで匂わせ投稿か
NEWSポストセブン
不倫疑惑が報じられた田中圭と永野芽郁
《離婚するかも…と田中圭は憔悴した様子》永野芽郁との不倫疑惑に元タレント妻は“もう限界”で堪忍袋の緒が切れた
NEWSポストセブン