その段階でも、エミカさんの「只者ではない」感は突出していたが、お酒の入った徹さんは「オレの趣味はエミカだけだから」と我々に向かって惚気る。VIP席に通された彼女の卓には、ランキング上位の人気ホストたちが緊張した面持ちで次々に挨拶にやって来る。エミカさんは、彼らが席を立つたびに「あの子は、キレイな顔で人気もあるけど、お客さんにベタベタするばっかりだから、そろそろ頭打ちだね」などと、ホストたちに容赦のない評価を下す。その佇まいや、ホストたちからの扱いは、さながら”姐さん”である。
閉店時間となると、最後に残った私たちを、徹さんとエミカさんの2人が店外まで見送った。手慣れた様子で、私のためにタクシーを止め「今日はありがとうございました」と挨拶するエミカさんの様子は、本当の「妻」のようであり、歌舞伎町ではホストとの「恋」に泣く女のコばかりをみてきた私にとっては、エミカさんの存在は衝撃的だった。なぜ、彼女は人気ホストに選ばれたのか。
その理由は誰もが振り返るような美貌に加え、圧倒的な「稼ぎ」にあった。
23歳で歌舞伎町に足を踏み入れたというエミカさんは、徹さんと付き合う前に交際していた相手もまた、歌舞伎町のホストだった。エミカさんは、「カレをナンバーに入れるためには稼がなくては!と、デリヘルで働くことにしたんです。だけど、やってるうちに“何だか割に合わないな”と感じるようになって……そんなときに、AVに出ないか?と声がかかったんです」と笑顔で話す。
当時は、蒼井そらや及川奈央など、「セクシータレント」の全盛期。彼女たちは「AV女優」の枠を出て、アイドル的存在となり、テレビや雑誌など幅広く活躍していた。そのためエミカさんは“AVデビュー”に何の抵抗もなかったという。
「AVに出演したことで付加価値が付き、デリヘルの単価は一気に10倍に跳ね上がりました。並行して行っていた“パパ活”でも、かなり太いパパをつかまえることができました。AVは私にとってブランディングとなったんです」(エミカさん)
だが、当時の彼とはほどなくして破局を迎える。その後に出会ったのが徹さんである。
「もともと徹は、大阪の有名ホストクラブに所属していた人気ホスト。出会ったのも大阪で、しばらくは遠距離恋愛だったのですが、『さらにビッグになる』と東京へと進出したんです。だから私は、“この人の顔をたてないと……”と、徹のために月に平均350万円はお店で使っていたし、イベント時には最高、一晩で1500万円課金したこともあります」