家族とは30年間音信不通
柔道留学生として来日してから半世紀以上経過し、すっかり日本の魅力に取りつかれたというチャックさんは「アメリカに帰ろうと思ったことはない」と断言する。
「僕は生まれた国を間違ったみたい。日本に来てから1年でアメリカに帰る気はなくなりました。僕は日本人が好きなんです。日本人は何でも一生懸命やるし、自分のためだけでなく人のためにも頑張るという立派な精神があります」
一方で、現在の日本社会に注文もあるという。
「どこの国も同じだけど、今の日本も問題だらけです。給料が20年間上がらないのに物価が上がって、若者が結婚したがらず子供が増えない。仕事のない人や夢を持てない人が増えて、健康保険や年金もどれだけ持つかわからない。何よりも、男が弱虫になった。成功する道を見つけるのが、昔に比べ簡単でなくなっているとも感じます」
近年、日本でも深刻化している「いじめ」問題も憂慮する。自らがひどいいじめを受けた経験から、チャックさんがいじめられている子供とその親にメッセージを送る。
「いじめられる根本は自分が弱いからです。だから自分が弱いことを認めて、自分を強くすることが大切。自分を信じて自分を強くすることができれば、心の痛みは乗り越えられます。そのためにも自分には価値があるんだと信じることが一番の解決法です」
チャックさんは、アメリカにいる母や姉、妹と30年前から連絡をとっていない。だからこそ、親の愛情が重要なことも痛感している。
「いじめや人生の困難を克服するために、もっとも大切なのは親の愛情です。親に愛されていると信じることができれば、子供に自己肯定感が芽生え、どんな困難も乗り越えられるようになると僕は考えている」(取材・構成=池田道大)
(第3回に続く)