シーツが汚れても交換は週に1度だけ
日本人の風呂好きは世界でも有名だが、高齢になってからも毎日さっぱりしたいもの。
「要介護になっても、“超高級”なら週3回は入れる。オプション代を出せば毎日でも入れるところがほとんどです」(佐藤さん・以下同)
中には、源泉かけ流しの温泉がついており、スーパー銭湯なみの広々とした温泉施設が併設され、入居者は入り放題というところもあるようだ。では「底辺」はどうか。
「ケアプランに『清潔の保持』という項目があり、特別な事情がなければ週2回は入浴できます。ただし“底辺”では、追加料金を出そうにも、それ以上の頻度での入浴は断られるところがほとんど。なぜなら、人手が足りないからです」
認知症を患う85才の母親が入居中の岡田哲次さん(仮名・59才)はショッキングな光景を目にした。母親が面会時間内で人の多い談話室の横を、全裸にバスタオルをかけただけの姿で、車椅子に乗せられてきたという。
「しかも男女問わずです。1人ずつ交代で浴室に入りますが、ものの5分くらいで出てくる。順番が次になるとタオルを取られ、全裸で待機。入浴が済むと全裸でびしょぬれのまま出され、別の人が体を拭く。またタオルをかけられて部屋に運ばれていく。工場のラインのようでした」
いくら年を取っても、人前で裸をさらすのは嫌なもの。岡田さんの母親のケースが極端な例であることを祈るばかりだ。太田さんが解説する。
「お風呂は入りすぎると弱っている体に負担となりますが、好きなときに入れないのは苦痛。部屋にお風呂があるとか、自由に入れるかについては事前に確認すべき点です」
入居者の身だしなみにも大きな差が生まれる。
「朝は人がいちばん足りない時間帯で、次々と介助をこなしていかねば間に合わないところと、倍の人手がある施設とでは御髪に櫛を通す回数はおのずと変わってくる。時間に追われていれば“このくらいでいいか”となりがちです」(佐藤さん)
かくして「底辺」の入居者は頭髪が乱れ、服もヨレヨレになりがちなのだ。寝室にも大きな差が出る。ある「最高級」の部屋を見てみると、鎮座するのは広々としたベッド。ピンと糊のきいたシーツやカバー類はすべてオーガニックコットン。枕はなんと体形に合わせたオーダーメードだ。アロマのいい香りが満ち、遮光カーテンで外を気にせず快眠できる──上質な睡眠は生活のクオリティーを上げる重要なものだ。奈良県の池田陽子さん(仮名・79才)がこぼす。
「私のいるホームは衛生面が最悪。シーツ交換は週に1度だけ。汚れたらウエットティッシュやタオルで拭き取ってアルコールスプレーをかけて消毒するだけです。2年前に入居してから布団を干したことは一度もなく、消臭スプレーをシュッとするだけ。カーテンもカビて、掃除もしてくれないので部屋はほこりだらけ。あちこちの部屋から咳がひっきりなしに聞こえます」
(後編に続く)
※女性セブン2022年9月22日号