高校の先輩後輩
脱安倍をめざす岸田文雄首相にとっても、渡辺氏の不在は無視できない。前出の全国紙政治部記者が語る。
「岸田首相の父・文武さんと渡辺さんは旧制東京高等学校の同級生で、文武さんの葬儀では渡辺さんが友人代表として弔辞を読みました。さらに渡辺さんと岸田首相は同じ開成高校出身で先輩後輩。OB会も定期的に開催されており、付き合いは深い。父親の代からの交友もあり、岸田首相は渡辺さんに頭が上がりません。政権が代わっても、渡辺氏が後ろ盾である事実は変わらないのです」
新年早々の今年1月7日、岸田首相は読売新聞グループ本社のビューラウンジで渡辺氏と会食した。これが先のOB会なのだが、「その会では渡辺さんの政局観が披露されることが多い」(別の全国紙政治部記者)という。
岸田政権はいま、「安倍国葬」「旧統一教会問題」で揺れており、世論調査では過去最低の支持率を記録している。
難局で頼りの“大老”が長期入院中であることは八方塞がりの岸田首相には痛手だろう。同時に渡辺氏の不在は、読売新聞にとっても世代交代の難しさを浮き彫りにした。森氏が指摘する。
「読売新聞グループ現社長の山口寿一氏は、大阪府と大阪読売の包括連携協定を結んだり、桜を見る会の運営会社を日本テレビHDに買収させ、そこが安倍国葬の運営を担うことになったりと政権との距離は近い。ただ、そのやり方はやや露骨に見えた。渡辺氏は豪腕でありながら政権や霞が関に根回しできる調整力があり、そこには哲学を学んだ見識が見え隠れした。山口社長にもそのあたりのバランス感覚が求められそうです」
読売新聞に渡辺氏の入院と容態について聞くと、
「個人の病名や病状に関するご質問は、プライバシーにかかわることですので、役員、社員を問わずお答えしていません」(読売新聞グループ本社広報部)
とのことだった。
ドンのいない政界はどこへ行くのか。
(了。前編から読む)
※週刊ポスト2022年9月30日号