さらに、働き方によって間食や夜食の頻度が異なることもわかってきた。
「働き方別に1週間の間食と夜食を比較したところ、在宅勤務の人の間食と夜食の頻度が群を抜いて高いことがわかったのです」
『国民健康・栄養調査』でも、日本人のBMIは近年増加傾向にあったが、これにコロナ禍が拍車をかけたというわけだ。
日本人は内臓脂肪による隠れ肥満に厳重注意を!
では、なぜ肥満はいけないのか? これについてメディカルチェックスタジオ東京銀座クリニック院長の知久正明さんは次のように語る。
「たとえば沖縄県。昔は伝統的に健康にいい食事を取る長寿県でしたが、食生活の欧米化が進み、平均BMI数値の上位常連組になったら、心筋梗塞や脳梗塞など血管が詰まる病気が明らかに急増したのです」
皮下脂肪型の肥満が多い欧米人と違って、日本人の肥満には内臓脂肪型が多く、脂肪がお腹につきやすいという。
「内臓脂肪型の肥満では腸の周りの腸管膜や肝臓のほか、血管の周りにも脂肪がつきます(医学的には『血管周囲脂肪組織(PVAT)』という)。
血管の周りに脂肪が沈着すると、そこから動脈硬化を進行させる物質をたくさん出し、血管の中にプラークという脂分やコレステロールを形成し動脈が硬くなることにより、ゆくゆくは高血圧の原因にもなります。さらに内臓脂肪は糖尿病にもなりやすく、糖尿病・動脈硬化・高血圧の3つが重なると、将来、認知症にもなりやすいのです」(知久さん・以下同)
太るといけないのは、年をとってから増える病気を呼び込みやすくするから、ともいえる。
「肥満には3種類あります。皮下脂肪がお尻周辺についた女性に多い『洋ナシ型』、体全体が太った男性に多い『リンゴ型』、コロナ禍で急増した『隠れ肥満』の3つです。
この中で、隠れ肥満は『サルコペニア肥満』とも呼ばれ、BMIでは表せないタイプの肥満です。たとえBMIは正常で一見スリムでも、筋肉が少なく脂肪が多いことがあります。サルコペニア肥満は昔は老人に多く見られましたが、最近はダイエットをする若い女性や運動不足の人に多く、今後社会問題化する恐れがあります」
健康障害を伴う肥満症で通院する人の割合が多いのは、左上表のように沖縄県・佐賀県・愛媛県が上位3県だ。
「肥満だけではなかなか病院に行かないかもしれませんが、急に太った場合、睡眠時無呼吸症候群や糖尿病のような病気が隠れている可能性があります。恥ずかしがらず、早めにチェックするのが重要です」
心筋梗塞・脳梗塞・認知症。これらは日本人の死因のなかでも多く、また寝たきりになるリスクも高い。だからこそ、早めに肥満を解消しておくのがとても重要というわけだ。
取材・文/北武司
※女性セブン2022年9月29日・10月6日号