「反市場勢力」と判断せざるを得なかった
――杉浦氏にどのような抗議を行い、その対応はどのようなものだったか。
福田:警告者や抗議文は何度も出しています。それに対して、たとえば前述の野崎との絡みにおいて、横領の文面が乗った文書はそのままに、チャートを訂正、「資金流入疑惑」を「個人メール(を送った)」とするなどしていますが、役員が疑惑に関与したとする全体の流れは変わっていません。
――そうしたプロキシーファイトの過程の“悪しき”情報が解任につながったのか。
福田:影響を受けた株主さんがいるのは間違いありません。「どうなんですか。(詐欺と)わかっていたんですか」といった質問を受けることはよくありました。杉浦氏の情報・資料の公開以降、ネットの掲示板などにも、「(福田・野崎は)一連の会社資金流出の主犯格」といった表記が多くなりました。
――「悪質な印象操作」が裁判所に認められればどうなるか。
福田:杉浦氏の委任状勧誘が、「ネットや郵送を通じて虚偽の事実を伝える形で行われた」とされれば問題です。勧誘者は重要事項について「虚偽の記載や記録を提示することによって議決権行使の勧誘を行ってはならない」と、金融商品取引法の施行令で定められているからです。
――会社創生期に苦労した仲の杉浦氏と、事前に話し合いはできなかったのか。
福田:事業売却で手元資金が豊富になり、いろんな資金運用の話が持ち込まれましたし、「割安」になったということで買い占めに動く投資のプロも多かった。我々もそれなりに気にはなり、詐欺事件の起こる前から大株主の“素性”については調べていました。杉浦氏は、事件発覚の直後、「大株主を知っているので会ってみないか」と、連絡してきました。その株主の方は過去に証取委(証券取引等監視委員会)の業務停止命令を受けており、「反市場勢力」と判断せざるを得なかった。だから杉浦氏とも会うわけにはいかなかったんです。
――被害者として警視庁に刑事告訴、捜査が始まったことを公表すべきだったのでは?
福田:警視庁に対して、6月9日、スニール氏を被告訴人、被疑事実を詐欺とする告訴状を提出し受理されています。委任状争奪戦の際、その事実を開示すれば、我々に刑事上の嫌疑がかかっていないことの証明になったのですが、当局の指導により上場企業の立場ではそれができなかったのです。