「撮る」より「探してひと工夫」の姿勢
ただ、映像集特番というジャンルが「視聴者からの評判がいいか」と言えば、首をひねらざるを得ないのが現実。映像集の中にはネット上でも見られるものも多く、地方や世界の番組などから探し出してきた希少価値の高いものが少ないため、「ひと工夫したところで、わざわざ見るほどではない」とみなされがちです。
もともと「短い映像を次々にテンポよく見せていく」という構成は、民放各局が求めるコア層(主に10~40代)に向けたものですが、「ネットでも見られるでしょ」とみなされてしまい、結果的に中高年層向けの特番になっている感は否めません。また、民放各局が横並びで映像集特番を放送しているため、「豪華で特別な番組が多くワクワクする」という改編期特有のムードが薄れているのも苦しいところです。
9月21日にTBS系が2時間特番『ニュースそこだけファイル』(20時~)、同27日に日本テレビ系が2時間特番『解禁!音楽番組名シーンランキング THE神うた』(21時~)、29日にフジテレビ系が2時間特番『私のバカせまい史SP』(20時~)を放送しましたが、3番組の共通点は「局に眠る映像を使った特番」であること。このところ民放各局で「アーカイブ映像を局の財産とみなして積極活用していこう」という動きが見られ、その傾向が映像集特番と通じるところがあるのです。
その共通点とは、「新たに撮る」より「探してきたものにひと工夫入れて編集する」という制作姿勢。広告収入が下がり、制作費が厳しくなる中、これまで以上に発掘力とアイディアが問われるようになり、それが改編期に映像集やアーカイブ映像を使った特番を放送することにつながっています。
この傾向は業界のトレンドであり、苦肉の策でもあるだけに、今後、民放各局が配信収入を得られるようになり、再び制作費が上がらない限り続いていくのかもしれません。
【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月30本前後のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』などの批評番組に出演し、番組への情報提供も行っている。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』『独身40男の歩き方』など。