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高田文夫氏が思い出す三遊亭圓楽さんの言葉「名人にはなれなかったけど、達人にはなれた」

六代目三遊亭圓楽さんを偲ぶ(イラスト/佐野文二郎)

六代目三遊亭圓楽さんを偲ぶ(イラスト/佐野文二郎)

 放送作家、タレント、演芸評論家、そして立川流の「立川藤志楼」として高座にもあがる高田文夫氏が『週刊ポスト』で連載するエッセイ「笑刊ポスト」。今回は、先日、亡くなった六代目三遊亭圓楽さんについてつづる。

 * * *
“楽太郎”だった三遊亭圓楽(六代目)。若い頃からの仲間はみんな愛を込めて“楽ちゃん”と呼ぶ。私が日芸の2年生の時青学の1年生として“落研”に入ってきたのが楽ちゃん。人一倍の人なつっこさ、東京っ子ならではの気のつかい方、江戸っ子独特の世話好き。私の会があると率先して手伝ってくれる。

 テレビでみせる“芸”、毒舌と悪態とはまったく逆のキャラクターなのだ。何より仲間、人間を大切にする。“両国中学”での同級生がプロレスの天龍源一郎。ずっと友人のままで、天龍の為に、若手のプロレスラー達にいつもメシ、酒を御馳走していた。

 伝統芸の世界にいるからそうなのだと思うが自然と先輩、年上を心の底から敬う。師匠圓楽(五代目)も大師匠(師匠の師匠をこう呼ぶ。お爺ちゃんに相当)である昭和の名人、圓生もさぞや心地良かったろうと思う。若い頃より私には「高田先輩」「文ちゃん先生」「イヨッ名人」と呼び、私を大きく見せてくれた。

 20年以上前、私がいきつけの荒木町のスナックでマスターとヤクルトと巨人どっちが勝つか勝負した。私のヤクルトがVならむこう1か月タダ。巨人がVなら私が「一日店長」。案の定、私が負け一日カウンターの中へ。

 6時、店の口開け。まだ小学生の息子を連れて志の輔親子、父にはビールを出し、子供にジュースと缶詰めを出したらびっくりしていた。大変な店なのだ。松村邦洋やら若手芸人達もいっぱい来ててんやわんや。

 カウンター10席ない店がずっとゴッタ返し、12時をまわって少し落ち着いたら、なんと楽ちゃんがプロレスラー5人連れて入って来て「先輩、売りあげ大丈夫だった? 彼らに酒だけ飲ましてやって」と30分ぐらい飲んで私にそっと「じゃ先輩飲み代これ」とものすごいぶ厚い封筒を置いて一同ひきつれサッと帰って行った。これ程の祝儀は生涯もらったことはない。洒落っ気と義理と人情、受けた恩は倍にして返す。

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