ライフ

年金納付期間延長と高齢就業の厳しい現実 「70代で肉体労働できる高齢者はアスリート」の声も

店頭の掃除をする警備員。高齢者になっても元気に働ける人は、ごく一握りだ(イメージ、時事通信フォト)

店頭の掃除をする警備員。高齢者になっても元気に働ける人は、ごく一握りだ(イメージ、時事通信フォト)

 国民年金の保険料を納める期間を現在の20歳以上60歳未満の40年間から、65歳までの45年間に延長すると政府が検討しているとわかり不安が広がっている。後日、5年に一度行われている年金制度見直しの次回の課題であると加藤勝信厚生労働大臣が認めたことで、諦めと絶望が混じった雰囲気もただよい始めた。「もともと年金なんてあてにしてないから関係無い」と言う人も少なくないが、死ぬまで働ける人はごく一握りというのが現実だ。俳人で著作家の日野百草氏が、年金受給年齢となった70代になっても働き続ける人に高齢就業の厳しい現実を聞いた。

 * * *
「60歳だって若い時のようにはいかないのに65歳って、いまの若者は本当に大変ですね」

 政府は国民年金および厚生年金の基礎年金を、これまでの20歳以上60歳未満の40年間から、65歳までの45年間とする案の検討に入った。これが実現すれば、今後は60歳から5年分、65歳まで年金を納めることになる。

「60歳を過ぎたら驚くほど身体なんか動かなくなりますよ。若い人はなってみなければわからないから大丈夫だ、なんて言う。70歳代で肉体労働? それは高齢者の中ではアスリートですよ、私みたいな」

 そう笑って話してくれているのは70歳代のアルバイト男性、かつては自営業をしていたが時代の流れもあって畳み、それ以降は警備会社に勤めていると語る。交通誘導の2号警備として雨の日も風の日も、元気に立ち続けている。正直、筆者はその年齢でそれができるかどうか、まったく自信はない。

「道路工事はもちろん、大きな鮮魚専門店とか保健所の臨時駐車場とか、いろんな現場に立っています。仕事があるだけありがたいし、それ以上に、身体が元気なことがありがたい。働けなくなったら、(国民)年金だけでは食べていけませんからね」

 彼のような高齢就業者(65歳上)は18年連続で増加、2021年には909万人と過去最多を記録した(総務省統計局)。驚くのはコロナ禍、高齢者の死亡率が高いというのに減ることもなく、高齢就業者がむしろ増えたという現実である。

「身体が動かなければ仕事はできません。そもそも雇ってもらえない。どこもかしこも老人ばかり働いているから「年とっても働くか」なんて若い人は思っているかもしれませんが、年寄りにも競争がありますからね、意外と雇ってもらえませんよ。年とらなきゃ、わからない話ですけどね」

 筆者も反省させられる。どこかで「ずっと働ける」という甘い考えがないかと言えば嘘になる。高齢就業者が多いのは団塊世代人口はもちろん、農業や林業、小売業、卸業しなどの自営業者が多いからだと思わされるが、彼のような高齢の非正規従業員もまた、10年前に比べて225万人(!)増えている。勤めていた会社で雇用延長および再雇用された者も含めての話だが、高齢者の非雇用非正規はパート・アルバイト含めて75.9%にも及ぶ。

関連キーワード

関連記事

トピックス

東京都慰霊堂を初めて訪問された天皇皇后両陛下と長女・愛子さま(2025年10月23日、撮影/JMPA)
《母娘の追悼ファッション》皇后雅子さまは“縦ライン”を意識したコーデ、愛子さまは丸みのあるアイテムでフェミニンに
NEWSポストセブン
2023年に結婚を発表したきゃりーぱみゅぱみゅと葉山奨之
「傍聴席にピンク髪に“だる着”姿で現れて…」きゃりーぱみゅぱみゅ(32)が法廷で見せていた“ファッションモンスター”としての気遣い
NEWSポストセブン
渡邊渚さんの最新インタビュー
渡邊渚さんが綴る「PTSDになった後に気づいたワーク・ライフ・バランスの大切さ」「トップの人間が価値観を他者に押しつけないで…」
NEWSポストセブン
女優の趣里とBE:FIRSTのメンバーRYOKI(右/インスタグラムより)
《趣里が待つ自宅に帰れない…》三山凌輝が「ネトフリ」出演で超大物らと長期ロケ「なぜこんなにいい役を?」の声も温かい眼差しで見守る水谷豊
NEWSポストセブン
ルーヴル美術館での世紀の強奪事件は瞬く間に世界を駆け巡った(Facebook、HPより)
《顔を隠した窃盗団4人組》ルーブル美術館から総額155億円を盗んだ“緊迫の4分間”と路上に転がっていた“1354個のダイヤ輝く王冠”、地元紙は「アルセーヌ・ルパンに触発されたのだろう」
NEWSポストセブン
活動休止状態が続いている米倉涼子
《自己肯定感が低いタイプ》米倉涼子、周囲が案じていた“イメージと異なる素顔”…「自分を追い込みすぎてしまう」
NEWSポストセブン
松田聖子のモノマネ第一人者・Seiko
《ステージ4の大腸がんで余命3か月宣告》松田聖子のものまねタレント・Seikoが明かした“がん治療の苦しみ”と“生きる希望” 感激した本家からの「言葉」
NEWSポストセブン
“ムッシュ”こと坂井宏行さんにインタビュー(時事通信フォト)
《僕が店を辞めたいわけじゃない》『料理の鉄人』フレンチの坂井宏行が明かした人気レストラン「ラ・ロシェル南青山」の閉店理由、12月末に26年の歴史に幕
NEWSポストセブン
森下千里衆院議員(共同通信社)
《四つん這いで腰を反らす女豹ポーズに定評》元グラドル・森下千里氏「政治家になりたいなんて聞いたことがない」実親も驚いた大胆転身エピソード【初の政務三役就任】
NEWSポストセブン
ナイフで切りつけられて亡くなったウクライナ出身の女性イリーナ・ザルツカさん(Instagramより)
《19年ぶりに“死刑復活”の兆し》「突然ナイフを取り出し、背後から喉元を複数回刺した」米・戦火から逃れたウクライナ女性(23)刺殺事件、トランプ大統領が極刑求める
NEWSポストセブン
『酒のツマミになる話』に出演する大悟(時事通信フォト)
『酒のツマミになる話』が急遽差し替え、千鳥・大悟の“ハロウィンコスプレ”にフジ幹部が「局の事情を鑑みて…」《放送直前に混乱》
NEWSポストセブン
『週刊文春』によって密会が報じられた、バレーボール男子日本代表・高橋藍と人気セクシー女優・河北彩伽(左/時事通信フォト、右/インスタグラムより)
「近いところから話が漏れたんじゃ…」バレー男子・高橋藍「本命交際」報道で本人が気にする“ほかの女性”との密会写真
NEWSポストセブン