医者や病院は定期的な健康診断をすすめるが、和田さんはこれにも否定的だ。
「健康診断は正常値の範囲から高すぎたり低すぎたりする人を『異常』と判定するだけで、数値が異常でも明らかに健康的な人もいるし、逆に正常なのにその後、病気になる人もいる。日本には健康診断の結果を長期に追跡した大規模調査がほとんどなく、有効性を判断できません。
一方で『心臓ドック』と『脳ドック』はただの数値ではなく、実際の血管状態などを調べることで個人の置かれた状況をチェックできます。その後の処置につなげられて有益な検査になります」
病院の選別も注意したい。体調に異変が生じた際、「とりあえず大学病院」という高齢者が多いが、和田さんは「それはNG」と語る。
「大学病院は専門分化が激しく、患者の状態をトータルで診ることはまれです。しかし高齢者は体の状態の個人差が大きく、同じ薬をのんでも効き方が異なり、複数の疾患を抱えることも多い。なので大学病院の専門医よりも、高齢者を診る機会の多い、地域のいわゆる町医者をかかりつけ医にした方が安心です」
【プロフィール】
和田秀樹(わだ・ひでき)/1960年6月7日生まれ、大阪府出身。東京大学医学部卒業後、東大医学部附属病院精神神経科、高齢者専門の浴風会病院、米国カール・メニンガー精神医学校国際フェローなどを経て、11月よりルネクリニック東京院院長。30年以上にわたり、高齢者医療の現場に携わる。著書『80歳の壁』がベストセラーに。
※女性セブン2022年11月10・17日号