芸能

11年間封印されたコンサート、石巻市のステージに立つシャンソン歌手・クミコが唄う「反戦歌」

歌手のクミコ

2022年3月、サントリーホールで開催されたチャリティコンサーでウクライナ侵攻に対して、平和を願い『愛しかない時』を歌唱

「コロナ禍でさまざまなコンサートや公演が中止されたり延期されたりしましたが、11年間も延期されたコンサートというのは、そうそうあるものではないですよね。

 東日本大震災で延期になったコンサートを、嬉しいことにこのたび開催し、唄わせていただくことになりました。悲しみの中で生きてこられた皆さまとお会いできることは、待ち望んでいたプレゼントをいただいたような気持ちがしています」

 こう語るのは、今年デビュー40周年を迎えた歌手のクミコ(67)。1982年にシャンソン喫茶『銀巴里』でデビューして以来、『愛の讃歌』や『わが麗しき恋物語』など数々の名曲を歌い継ぎ、2010年にはNHK紅白歌合戦に出場した円熟の歌姫である。

 宮城県石巻市でクミコが被災したのは、紅白に出場した翌年のことだった。

「2011年3月11日、私は宮城にいました。石巻市民会館でコンサートを行うために楽屋にいたところ、突然大きな揺れに襲われ、慌てて駐車場に避難したんです。

 破壊的な揺れが収まると津波警報が出て、裏山の道なき道を必死で登りました」

 採石場でひと晩を過ごし、ラジオから聞こえてくる被害状況に絶句。山を降りて様子を見にいった人が暗い表情で帰ってくるのを見て、暗澹(あんたん)たる思いに駆られた。

 東京に戻ってからも被災地を思って涙し、うつ状態に陥ったという。

シャンソン歌手のクミコ

歌手のクミコ

「手を取り合って、コンサートを行うはずの方々も何人かが帰らぬ人となりました。

 うつ状態だった私を救ってくれたのは、他ならぬ石巻の方々です。再び現地を訪れて、避難所や、店舗の一角、仮設住宅の集会所など、あらゆる場所で唄わせていただき、皆さんから優しい言葉をかけていただいたことは忘れられません」

 予定されていたコンサートは、地元の人々の協力のもとで2年近く準備してきたもの。熱い思いが込められた催し物だ。震災から11年。現地の復興が進み、解体された市民会館に新たにホールが設立され、地元の人々から開催を熱望する声があがった。
「また機会をいただけるとは思ってもいなかったので、こんなに嬉しいことはありません。11年の歳月は長いようで、あっという間だったようにも感じます」

 今年4月、石巻市はサンドウィッチマンや林家たい平(57)らと共に、クミコを観光大使に任命した。11月8日、石巻マルホンまきあーとテラスで行われるコンサートには、市長が任命状を渡しに訪れる予定という。

『銀巴里』で唄い始めてから今年で40年。クミコは、これまでの足跡、そして、これからのことを確認する思いを込めた新録『愛しかない時』をリリースする。

 原曲は、世界中で反戦歌として親しまれるシャンソンの名曲。クミコが27歳のときに日本語詞をつけて以来、歌い続けてきた作品だ。

ウクライナでの一枚

2016年にチェルノブイリ原発事故から30年を迎えたウクライナを訪問

「私は過去に、ウクライナに二度行っています。原爆をテーマにした『INORI〜祈り〜』を唄ったご縁で、テレビ番組のロケで事故後30年経ったチェルノブイリにも訪れました。私が出会った方々が戦争のまっただ中にいることに絶望感を覚えつつも、SNSを通じて歌を届け合ってきました。レコーディングに臨んだときは、当時お世話になった通訳の方や、ご家族、現地の方々の無事を祈りました。

 石巻市がウクライナから避難した人を受け入れていることにもご縁を感じずにはいられません。災害であっても戦争であっても、どんな無力感の中でも人は支え合うことができる。暗闇の先には必ず光があるはずです。

 昨日が今日になり、いつものように明日が来る。そのことが奇跡のように尊いことだとわかった今だからこそ、唄える歌たちがあります。どの会場でも『どっこい生きてやる』、『したたかに生きていこう』と思ってもらえるライブにしたいと思っています」

【プロフィール】
クミコ/1982年、シャンソニエの老舗『銀巴里』でプロとして歌手活動スタート。2002年『わが麗しき恋物語』のヒットで脚光を浴び、2010年『INORI〜祈り〜』で第61回 NHK『紅白歌合戦』初出場。2017年のアルバム『デラシネ』は日本レコード大賞優秀アルバム賞を授賞した。2021年8月、中島みゆき書下ろし曲『十年』をリアレンジとして話題に。今年、デビュー40周年。今年8月からはじまったツアー『わが麗しき歌物語Vol.5~愛しかない時~』では、石巻と同じく被災地の福島・南相馬市民文化会館でも歌声を届けた。石巻公演は11月8日、12月4日の東京・EXシアター六本木がファイナルとなる。

関連記事

トピックス

ブルックリン・ベッカムと、妻のニコラ・ペルツ(Instagramより)
《ベッカム家に泥沼お家騒動》長男ブルックリンが父母に絶縁宣言「一生忘れられない屈辱的な記憶」は結婚式で実母ヴィクトリアとの“強制ファーストダンス”、新婦は号泣
NEWSポストセブン
初場所初日を迎え、あいさつする日本相撲協会の八角理事長(2026年1月11日、時事通信フォト)
土俵が大荒れのなか相撲協会理事選は「無投票」へ 最大派閥・出羽海一門で元横綱・元大関が多数いるなか「最後のひとり」が元小結の尾上親方に決まった理由
NEWSポストセブン
。一般人を巻き込んだ過激な企画で知られるイギリス出身のインフルエンサーのボニー・ブルー(Instagramより)
「行為を終える前に準備」「ゴー、ゴー、ゴーです」金髪美女インフルエンサー(26)“12時間で1000人以上”を記録した“超スピード勝負な乱倫パーティー”の実態
NEWSポストセブン
米倉涼子が書類送検されたことがわかった
《5か月ぶりの表舞台直前で》米倉涼子、ギリギリまで調整も…主演映画の試写会前日に“書類送検”報道 出席が見送られていた
NEWSポストセブン
天皇皇后、愛子さま
《溜席の着物美人が2日連続で初場所に登場》6年ぶりの天覧相撲に感じた厳粛さを語る 力士のみならず観客も集中し、「弓取り式が終わるまで帰る人がいなかった」
NEWSポストセブン
肺がんのため亡くなったフリーアナウンサーの久米宏さん(時事通信フォト)
《キー局に就職した有名アナも》久米宏さんに憧れて男性アナウンサーを目指した人たち 爆笑問題・田中はTBSラジオでのバイト時代に「久米宏さんになりたかった」
NEWSポストセブン
近代化する火葬業の舞台裏に迫ったジャーナリストの伊藤博敏氏
《火葬ビジネスの裏面史》都内の火葬場を独占する「東京博善」は中国人実業家がトップに就任…いまも「民間の火葬場」が生き残っている歴史的経緯
週刊ポスト
米倉涼子が書類送検されたことがわかった
《ゲッソリ痩せた姿で取調室に通う日々》米倉涼子が麻薬取締法違反で書類送検、昨年末に“捜査終了”の匂わせ 元日にはファンに「ありがとう」と発信
NEWSポストセブン
 相撲観戦のため、国技館へ訪問された天皇皇后両陛下と長女・愛子さま(2026年1月18日、撮影/JMPA)
「美しすぎて語彙力消失した」6年ぶりの天覧相撲 雅子さまは薄紫の着物、愛子さまは桜色の振袖姿でご観戦
NEWSポストセブン
次期衆院選への不出馬を表明する自民党の菅義偉元首相(時事通信フォト)
《一体今は何キロなのか…》菅義偉元首相が引退を表明「健康状態は全く問題ない」断言から1年足らずでの決断 かつて周囲を驚かせた“10キロ以上の激ヤセ”
NEWSポストセブン
“メンタルの強さ”も際立つ都玲華(Getty Images)
《30歳差コーチと禁断愛報道》女子プロゴルフ・都玲華、“スキャンダルの先輩”トリプルボギー不倫の先輩3人とセミナー同席 際立った“メンタルの強さ”
週刊ポスト
女優のジェニファー・ローレンス(dpa/時事通信フォト)
<自撮りヌード流出の被害も……>アメリカ人女優が『ゴールデン・グローブ賞』で「ほぼ裸!」ドレス姿に周囲が騒然
NEWSポストセブン