来年3月開幕のWBCに向け、11月5日から侍ジャパンの強化試合とオーストラリア戦が計4試合行なわれる。本番のWBCも含めて日本代表の4番に座る最有力候補は今季、史上最年少で三冠王を獲得したヤクルト・村上宗隆(22)とみていい。日本選手最多となるシーズン56本塁打をはじめ、5打席連続本塁打の日本記録を打ち立てるなど、記録ずくめの1年となった。村上を「ホームランバッター」として高く評価する数々の指摘があるが、通算500本塁打超えのレジェンドは、むしろ村上の「高い打率を残せる能力」にこそ、凄さの本質があるのではないかとみている。
歴代3位の通算567本塁打を放ち、40歳になった1988年に44本塁打、125打点で二冠に輝き“不惑の大砲”と呼ばれた門田博光氏。現役当時、「ホームランは狙って打っていた」と公言する門田氏の目に、村上のバッティングはどのように映ったのか。
「ボクには村上がホームランバッターではなく、アベレージヒッターに見えるんですよ。(頭から両足が)二等辺三角形の構えで始まり、二等辺三角形のかたちで終わる。つまり軸足にあまり重心を乗せず、体重移動をしないで打っている。これは、いわゆる“安打製造機”と呼ばれるバッターの打ち方なんですよね。
我々が教わったのは軸足に体重を乗せ、インパクトの瞬間にパワーを全開にするために体重移動をしていく。それによって、打球を遠くに飛ばそうとする。軸足に体重を移すところからインパクトまでの間に『弱』から『強』へと出力を上げるスイングイメージだが、村上は『弱』がなくて、ゼロからいきなり『強』になる印象。若さと恵まれた肉体があるからできることでしょう」
今季の村上は早い段階から本塁打と打点のランキングで独走態勢を築き、最後に打率(.318)のタイトルが確定したが、門田氏は「村上の打率はまだ上がる」と断言する。
「もちろん56本も打てるシーズンはなかなかないでしょうが、ホームランと打点は図抜けていますから、打率が上がるということは、これから何回も三冠王のチャンスがあるということだと思いますね」