創業者と親しい関係だった
「ひばりさんの晩年を支えてくれた上杉さんが突然、王将事件に関係してテレビや新聞のインタビューを受けていたので驚きました。政界や財界に顔が広い実力者なのは知っていましたが、たしかに当時から得体が知れなかったというか……」と困惑するのは、往年のひばりさんを知る芸能関係者だ。
上杉氏は京都と福岡を拠点に、不動産業やゴルフ場経営などを手掛ける実業家だった。バブル全盛期には、ゴルフ場、ハワイの別荘、熊本の豪華旅館、ジェットヘリやプライベートジェットなどを所有する航空会社まで傘下に収めた。経済事件に詳しいジャーナリストの伊藤博敏氏が言う。
「福岡出身の上杉氏は、若い頃に賭博で身を持ち崩し、関西に流れ着いたそうです。その後、京都で電話などの通信機器関連事業の会社を立ち上げました」
上杉氏の会社が、王将に電話機を納入したのが、両者の関係の始まりだったという。
「上杉氏の異母兄が、部落解放運動に取り組んだ伝説的なリーダーだった縁で、上杉氏は福岡や京都の政財界と親しくなっていきました。そのなかで、王将創業者である故・加藤朝雄氏とも親密な関係になったようです。王将が各地に出店する際や、資金繰り、運営トラブルなどで上杉氏が相談に乗る代わりに、王将も上杉氏の事業をサポートするという間柄だったようです」(前出・伊藤氏)
1993年に朝雄氏が亡くなった後も、王将と上杉氏の親しい関係は継続したようだ。
「創業一族の経営陣を中心に、上杉氏が関係する不動産を相場より高く購入するなど、上杉氏のビジネスに便宜を図ってきた。その結果、王将がかなりの損失を出していたのです」(前出・伊藤氏)
2000年に社長に就任した大東氏は、その関係にメスを入れたという。
「1993年から2006年にかけて、総額260億円以上もの不適切な取引が、上杉氏が代表をしていた企業グループとの間でなされ、王将は170億円もの損失を被っていたといいます。2013年11月に、王将の第三者委員会が、不透明な取引の全容を記した調査報告書のたたき台をまとめました」(前出・社会部記者)
それからわずか1か月後に、大東氏は殺害された。
「上杉氏はメディアの取材に対し、“取引は王将側から持ちかけられたもので、交渉はスムーズでトラブルはなかった”“事件には関与していない”と主張しており、今後の捜査の進展が待たれます」(前出・社会部記者)