ビジネス

「走行距離税」新設に地方の反発 「田舎では歩くのに税金かけるようなもの」

元レーシングドライバーでもある三原じゅん子参院議員も走行距離税という提案に声をあげた(時事通信フォト)

元レーシングドライバーでもある三原じゅん子参院議員も走行距離税という提案に声をあげた(時事通信フォト)

 自家用自動車の普及台数は1世帯あたり1.032台で、一家に一台以上のクルマがあるのは普通のことだ。都道府県別に世帯あたりの保有台数をみると上位から【1】福井(1.708台)、【2】富山(1.652台)、【3】山形 (1.642台)、【4】群馬(1.593台)、【5】栃木(1.572台)など39県にのぼる。1台に満たないのは東京、大阪、神奈川、京都など8都道府県にとどまった(一般財団法人自動車検査登録情報協会調べ)。クルマは贅沢ではなく生活のためというのが平均的な日本国民の実態だろうが、その自動車に対し、政府の税制調査会で走行距離に応じて自動車に課税する制度の新設が提案された。俳人で著作家の日野百草氏が、世帯当たりの保有台数上位に入る地方都市で、走行距離税に対する本音を聞いた。

 * * *
「ここでは車がないと生活できませんよ」

 北関東のローカル駅、東京から電車であれこれ3時間は掛かるだろうか、大きいばかりで人の少ない駅舎を前に、ひたすらバスを待っているとベンチで隣り合った高齢男性としばし会話。

「私は息子が迎えに来てくれますからいいですけど、あなた、1時間以上も待つつもりですか。乗っけて行ってあげましょうか」

 取材の本旨から外れるため丁重にお断りする。バスはあと1時間半来ない。この地方ではバスの便が減り、主に公営のコミュニティバスが一部を担っているようだが、それでも東京の都心部のように5分、10分で次のバスが来るわけではない。電車すら時間にもよるが日中30分、40分は平気で待たされる状態だ。主な商業施設も駅から離れたロードサイド店舗が大半だ。

「それなのに車の税金はどんどん上がるでしょう、息子夫婦だってそんなに給料がいいわけじゃないし、この辺の若い家族なんてみんな同じようなものです。走れば走るほど税金ですか、もうこの国はおしまいですね」

 走行距離税の話を向けるとこの返答、実際に生の声で「この国はおしまい」と聞くとドキリとさせられる。実際はそれほど逼迫した気持ちの言葉ではないのだろうが、それでも彼の本音ではあるのだろう。訥々と遠くに見える山々を眺めながらの訛り言葉、時期からすればそれほど寒くないはずなのに、胸のあたりが薄ら寒くなる。

大切にすると罰金なんておかしい

 筆者は各メディアでたびたび自動車に対する課税制度の問題を取り上げてきた。しかし今回、新たに加わることになるのではと言われる自動車税「走行距離税」はやばい。元レーシングドライバーでもある自民党の三原じゅん子議員も「これは国民の理解を得られないだろう」とツイートした。当の与党議員すら「走行距離税はやばいよ」ということで、本当にやばい。実現すれば、悪い意味で日本の根幹を揺るがす新税である。

関連キーワード

関連記事

トピックス

全米の注目を集めたドジャース・山本由伸と、愛犬のカルロス(左/時事通信フォト、右/Instagramより)
《ハイブラ好きとのギャップ》山本由伸の母・由美さん思いな素顔…愛犬・カルロスを「シェルターで一緒に購入」 大阪時代は2人で庶民派焼肉へ…「イライラしている姿を見たことがない “純粋”な人柄とは
NEWSポストセブン
各地でクマの被害が相次いでいる
JR東日本はクマとの衝突で71件の輸送障害 保線作業員はクマ撃退スプレーを携行、出没状況を踏まえて忌避剤を散布 貨物列車と衝突すれば首都圏の生活に大きな影響出るか
NEWSポストセブン
真美子さんの帰国予定は(時事通信フォト)
《年末か来春か…大谷翔平の帰国タイミング予測》真美子さんを日本で待つ「大切な存在」、WBCで久々の帰省の可能性も 
NEWSポストセブン
(写真/イメージマート)
《全国で被害多発》クマ騒動とコロナ騒動の共通点 “新しい恐怖”にどう立ち向かえばいいのか【石原壮一郎氏が解説】
NEWSポストセブン
シェントーン寺院を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
《ラオスご訪問で“お似合い”と絶賛の声》「すてきで何回もみちゃう」愛子さま、メンズライクなパンツスーツから一転 “定番色”ピンクの民族衣装をお召しに
NEWSポストセブン
ことし“冬眠しないクマ”は増えるのか? 熊研究の権威・坪田敏男教授が語る“リアルなクマ分析”「エサが足りずイライラ状態になっている」
ことし“冬眠しないクマ”は増えるのか? 熊研究の権威・坪田敏男教授が語る“リアルなクマ分析”「エサが足りずイライラ状態になっている」
NEWSポストセブン
“ポケットイン”で話題になった劉勁松アジア局長(時事通信フォト)
“両手ポケットイン”中国外交官が「ニコニコ笑顔」で「握手のため自ら手を差し伸べた」“意外な相手”とは【日中局長会議の動画がアジアで波紋】
NEWSポストセブン
11月10日、金屏風の前で婚約会見を行った歌舞伎俳優の中村橋之助と元乃木坂46で女優の能條愛未
《中村橋之助&能條愛未が歌舞伎界で12年9か月ぶりの金屏風会見》三田寛子、藤原紀香、前田愛…一家を支える完璧で最強な“梨園の妻”たち
女性セブン
土曜プレミアムで放送される映画『テルマエ・ロマエ』
《一連の騒動の影響は?》フジテレビ特番枠『土曜プレミアム』に異変 かつての映画枠『ゴールデン洋画劇場』に回帰か、それとも苦渋の選択か 
NEWSポストセブン
インドネシア人のレインハルト・シナガ受刑者(グレーター・マンチェスター警察HPより)
「2年間で136人の被害者」「犯行中の映像が3TB押収」イギリス史上最悪の“レイプ犯”、 地獄の刑務所生活で暴力に遭い「本国送還」求める【殺人以外で異例の“終身刑”】
NEWSポストセブン
“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
“関東球団は諦めた”去就が注目される前田健太投手が“心変わり”か…元女子アナ妻との「家族愛」と「活躍の機会」の狭間で
NEWSポストセブン
ラオスを公式訪問されている天皇皇后両陛下の長女・愛子さまラオス訪問(2025年11月18日、撮影/横田紋子)
《何もかもが美しく素晴らしい》愛子さま、ラオスでの晩餐会で魅せた着物姿に上がる絶賛の声 「菊」「橘」など縁起の良い柄で示された“親善”のお気持ち
NEWSポストセブン