「第三者委員会の報告書が公開されたことを受けて、テレビや新聞など各メディアが当該の男性教諭にも取材を申し込んだのですが、男性教諭は現在の勤務先となっている小学校の校長を通じて、男性教諭が作成したという『取材に関する誓約書』という文書に事前にサインすることを求めたのです。
その内容は社名、所属部署、氏名と捺印欄に、『私は』という文面から始まり、『誤解を生む記事が掲載』されないように『真摯に取材すること』、『取材の目的及び取材内容を書面にて事前に通知し、その目的あるいは取材内容と異なる事項について取材しないこと』『取材を拒否しても何ら異議を述べないこと』などを『誓います』と記載されているのです。
誤った記事を掲載しないように真摯な取材を尽くすのは大前提として、不適切指導が認定され、生徒の自殺の一因になったという疑義がある取材対象に対して、事前通知したこと以外は取材をしないことや、取材対象自身が『誤解を生む』と指摘する記事を掲載しないなど、取材を狭めるようなことを『誓います』とする文書を事前に出すのは明らかに取材行為から逸脱しています。うちも会社と相談して、誓約書には応じられないとしましたが、他社もほとんどが応じなかったようです」
男性教諭の取材対応の窓口となっている現在の勤務先の小学校の校長は、本誌・週刊ポストの取材に「『誓約書』と取材内容の通知に関しては、各社にお渡ししたのは事実です」と認めて、こう答えた。
「男性教諭本人が、『取材の際にはマスコミ各社に渡してほしい』ということで作成したものを、私が窓口でしたのでマスコミの方たちにお渡ししました。本人は取材の目的、内容をはじめ、発言の一部が切り取られることを危惧していたので誓約書を通して取材をお受けしたいということでした。誓約書は本人が持ってきたもので、私が添削するということはありませんでした。
男性教諭が以前、報道機関からの取材を受けた際に、当初の取材の目的とは全く違う質問を受けた経験があったので、その報道の影響を受け止めた中で、誓約書を作成したということです。
『こういう内容では(サインするのは)難しい』とか各社の対応はそれぞれでした。(現在は)本人が学校現場を離れていますし、私自身が取材に対応していた時とは状況も変わってしまっているので、窓口についても教育委員会の内部で協議してもらっています。仮に取材申請があっても、私が本人に直接伝えていいのかわからないという状況です」
市教委では、亡くなった男子生徒が通っていた小学校と中学校の保護者に対して、男性教諭の体罰、暴言等の不適切な行為について情報があれば11月末日までに相談窓口に連絡するよう呼びかけている。必要な調査をした上で、12月開催の体罰等審議会で審議、男性教諭については年内に処分が決定するという。