「顔写真付き中傷ビラ」に「偽注文」
全国弁連が結成された1980年代後半は「霊感商法」が野放しにされ、全国に被害が広がった時代だ。
代表世話人の山口広・弁護士が旧統一教会問題にかかわるきっかけは、「大理石の壺」だった。
「20代の銀行員の女性が街頭で声をかけられ、大理石の壺を200万円で買わされたという相談でした。詳しく話を聞くと、『亡くなった先祖が今苦しんでおり、そのせいであなたは幸せになれない、不幸になる』と壺の購入を説得されたと言うんです。それで相手方に通知書を送り、200万円を取り戻した。すると女性は教団の信者勧誘に使われるビデオセンターにも行っていて、『そこで知り合った人たちも被害を受けているから救いたい』と訴えてきた」
連絡を取ると、芋づる式に被害者が出てきた。売りつけられたのは高額な壺や印鑑、数珠や朝鮮人参茶もあった。「これは組織的なもので放置できない」と感じた山口弁護士は知人の弁護士に呼びかけて1987年2月に弁護団を結成、相談会を開くと1回で100人以上の被害者が集まった。7割以上が女性で被害額は10億円規模に上っていた。弁護団は同年5月に全国組織の全国弁連となった。
同時に妨害も始まった。自宅には1日200件以上の無言電話。相談会には「喜んで寄附しているのに」と抗議する女性信者が現われた。
中傷ビラも配られた。
「(教団の関連団体である)国際勝共連合が発行する『思想新聞』の号外という体裁のビラです。『暗躍する左翼弁護士』と題し、私も含めた4人の顔写真と名前、生年月日、住所なども掲載した。これが自宅近くで配られたわけです」(山口弁護士)
全国弁連のもう一人の代表世話人、河田英正・弁護士は「偽注文」に悩まされた。寿司の出前から保険契約、ガス漏れ点検、葬儀社まで頼んでいないのにやってきた。
「発注元の一つが教団の関係会社ハッピーワールドだったことから、統一教会でほぼ間違いないと警察に相談し、教団の教会周辺に『偽弁護士による発注に注意』という趣旨の文書を配布してもらったら、やっと止まりました」(河田弁護士)