勝さんいわく「中村玉緒なくして勝新太郎はありえない」(写真は中村のインスタより)

勝いわく「中村玉緒なくして勝新太郎はありえない」(写真は中村のインスタより)

 一方で事務所の逆鱗に触れる発言も多く、菓子折を片手にプロダクションに謝罪に行くことは日常茶飯事。「丸坊主にしたらようやく許してくれたことも」と苦笑いした前田さん。それでも翌週からは再び張り込みと直撃が当たり前のゲリラ取材を敢行し、オンエアでは忌憚なき発言をするのだ。

 常に接近戦でタレントたちと向き合ってきた前田さんから見ると、昨今のワイドショーは物足りなく感じることもあったという。

「今のワイドショーを見ていると、タレントがスタジオで自分の意見を述べているけど、同じ芸能人には厳しく言えないだろうし、その後ろには事務所があるわけでしょ。どうしても緩い発言になるよ。昔はあるタレントを全局で張り込んでいた時、深夜12時を過ぎても帰ってこない。みんなで話し合って、『今日は撤収しよう』と解散したんだよ。そしたら30分後、全員その場所に戻ってきた(笑)。どの局も独自のスクープに飢えていたもんです」

 事務所に配慮し、会見でヨコ並びの質問に終始するようになった結果、各局のレポーターたちの「聞く力」も衰えていったと前田さんは嘆く。

「神田沙也加さんが亡くなった時、松田聖子と神田正輝に『今のお気持ちは?』はないよな。やっぱり、聞いて良いことと悪いことがあるんですよ。その一線は引かないといけない」

 当時は若手リポーターが度を超えて失礼な質問をした際、会見終了後に梨本さんや前田さんが叱りつけたそうだ。

「事件でも芸能でも、現場に行かないとわからないことだらけじゃない? だから、芸能レポーターは必要なんだよ」

◆聞き手/岡野誠(おかの・まこと)/1978年生まれ。ライター。著書に『田原俊彦論 芸能界アイドル戦記 1979-2018』(青弓社)がある。執筆記事〈検証 松木安太郎氏「いいボールだ!」は本当にいいボールか?〉が第26回『編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞』デジタル賞に。

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