ここで演出陣はひとつの仕掛けをした。ただ大喜利をやるだけではなく、その中のどこかのタイミングで動きのボケがあったほうがいいと考え、動ける余地を与えるため「ゲレンデの気温を2℃上げてください」というお題を出した。有吉は言わずともそれを察知してくれる。
「有吉さんは、終盤、タイムマシーン3号の山本(浩司)さんとかインポッシブルのえいじさんとか絶対に何かを起こしてくれる人に振っていくんです。それで最後、(とにかく明るい)安村さんに振ったら、みんなでTT兄弟をやって終わるっていう流れになった。その場で有吉さんがみんなの表情とかを見て誰がいけるかを見ながら采配して、最後に大きなうねりができたわけですよ。あんなの絶対に台本に書けない。その場の状況と空気を俯瞰して見て、的確に旗を振って、こちらがまったく予期しなかった笑いを生むのが有吉さんのスゴさのひとつですね」
以前、SNSで大きな話題になった「ゴザ走り」でのハプニングのときもそうだった。ボケチームとツッコミチームで対決中、U字工事・益子卓郎がプールに入ったまま上がってこない。どうしたかと聞くと、結婚指輪を紛失したという。それを聞いた有吉が「探して!」と声を掛けると、芸人全員がプールに飛び込み捜索。あいなぷぅが発見し歓声に包まれる名シーンとなった。
「あそこでどうするかは有吉さんの裁量なわけですよ。後で探してよって言えば、そこで終わりで何も起きない。その場で瞬時に判断して、見つけた人に高得点をあげるって言って仕掛けるのが有吉さんなんですよ。この時は、前田(大輔)という演出が撮ったんですけど、まだ対決は残っていたけど、そこでいいものを撮れたから、見つけたあいなぷぅのチームが優勝ってことで終わらせた。その演出の判断も良かったと思います」