“一億円プレーヤー”は歌舞伎町でも30人に満たない
「お互いに安堵ですね」という。そうして、こう続けるのだ。
「とにかく負けられないんでね……。ここまで高額を出して押し上げてもらって、負けるわけにはいかない。負けたらヤバイ。結局、営業トークではなく、ここで新人王を獲って、将来的に僕がローランド(※カリスマホストのローランド)みたいになったときに、僕が彼女に『一番最初に僕を作ったのは、アンタだよ』という風に言えたら、それは彼女にとって充分に価値があることだと思うんです」
たしかに、彼女たちにとってもまたそれは人生のトロフィーになるのかもしれない。しかし一方で、「ホストに大金を使うことが、そんな美しい話だけで済むものなのだろうか」という疑念も湧いてくる。実際に、取材した「ホス狂い」たちの中には「ホストクラブに通うために実は借金を重ねていました」と打ち明ける女性が何人もいた。ホストたちはその輝かしい称号の裏に彼女たちのどれほどの労力や苦労があるのか、また数千万円の大金を課金することに伴う負担を、どれだけ理解しているのだろうか――
私の疑問を見透かすかのように、タイキ氏は言う。
「これはお金の話にかかわらずですが、どれだけ大きい事態であっても何かひとつのきっかけで人生がダメなってしまう事なんていうのは、犯罪くらいだと僕は思うんです。それ以外は、どれだけの事態であってもその場を乗り越えさえできれば20年後や30年後に失敗を取り返せないことはないし、大金を使ったことを半生にわたって後悔する人はいないと思う。むしろその時『いまテレビに映っているあの彼は、私があそこまで押し上げたんだよ』と人生を賭けたお客様に言わせたい。僕にはそういう風に言わせられる、思わせることができる自信があった。だからこそ、僕が途中で投げ出したり、『もうこれ以上上を目指さなくていい』という妥協をしてはいけないと思ったんです」