2011年の都知事選で当選を決めた石原慎太郎都知事。東日本大震災の対応で、街頭演説は最終日に立川駅前と有楽町駅前でのみ実施(撮影:小川裕夫)
一般的に考えれば、英語が適正と考えられるだろう。しかし、中韓からの観光客が増えていることを踏まえると、英語だけでなく中国語や韓国語(ハングル)表記もあった方が観光客にとって利便性が高くなる地域もある。
そうした背景を考慮し、2006年9月に発足した第1次安倍政権は多言語化のガイドラインを策定。同ガイドラインでは、多言語表記は日英のほかに中国語と韓国語(ハングル)を加えることが望ましいとした。
このガイドラインに基づき、各地の観光協会が多言語の観光パンフレットや案内看板を作成。また、鉄道やバスといった公共機関でも英語のほかに中国語や韓国語(ハングル)が追加されていく。いまや、鉄道の案内表示で中国語や韓国語(ハングル)を目にすることは珍しくない。
また、第1次安倍政権は2006年に観光立国推進基本法を成立させてもいる。同法は1963年に制定された旧・観光基本法を全面的に改正した法律で、観光産業の国際力強化や外国人観光旅客の来訪促進などが盛り込まれていた。2012年に発足した第2次安倍政権でも外国人観光客の誘致には力を入れており、第1次で着手した多言語化の強化や改善に取り組んでいる。
安倍元首相の功績を語るときに観光立国の推進、とりわけ多言語表記に取り組んだことはほとんど触れられることはない。しかし、第1次安倍政権が撒いた訪日外国人観光客を増やすという種は、第2次安倍政権以降で着実に実を結んだ。
政治家・石原慎太郎の真骨頂は内政
2022年に亡くなった大物政治家といえば、89歳で没した石原慎太郎氏も一時代を担った政治家として思い出される。筆者は、都知事時代から政治家・石原慎太郎を機会あるごとに追いかけてきた。長らく自民党の国会議員を務め、思想・政策的にも自民党の保守派とは近い関係にある石原候補だったが、2014年の衆院選では街頭演説で「株価だけを上げても日本全体の経済が上向くわけではない」と、安倍政権が進めるアベノミクスを批判。自民党政治にも懐疑的な演説をしている。
石原都知事は都知事在任中のみならず、国会議員時代も外交・防衛関連の発言で耳目を集めることが多かった。しかし、政策を仔細に点検してみると、外交・防衛以外の政策、特に都知事時代にたくさんの成果を出している。例えば、都知事時代には不良債権処理で税負担を免れていた銀行に課税するべく石原新税(銀行税)を打ち出したことは、その後の地方自治体財政の大きな転換点として記録される。