『鎌倉殿の13人』は三谷幸喜氏が脚本を務めた
そんな主人公と家族・家臣たちの物語を、誰よりも史実に忠実に描きながら笑いを交えた作風も、三谷さん同様に期待されているところ。ともにハラハラドキドキの展開から、痛快などんでん返しの結末を得意としていることもあって、歴史好きの視聴者層を満足させつつ、それ以外の幅広い層も楽しませるエンタメ性の高い作品になるでしょう。
もう1つ登場人物で注目してほしいのは、女性たちの描き方。古沢さんは史料が少なく自由に書ける女性の登場人物を「書いていて楽しい」と語っています。さらに家康の正室・瀬名(有村架純)についても、「現代的な女性に見えてもいい」「今の人が共感できる夫婦を書いている」とコメントしていました。
これは「戦国時代の女性はこうあるべき」「男の力だけで時代を動かした」という固定観念にとらわれず、むしろ「周囲にいた女性の能力が高いから主人公が成功できたかもしれない」という解釈でしょう。政子(小池栄子)、りく(宮沢りえ)、実衣(宮澤エマ)、八重(新垣結衣)、比奈(堀田真由)ら女性たちの魅力や活躍を描いた『鎌倉殿の13人』の三谷さんにも、明らかにそんな解釈が見られました。
大河ドラマ、引いては時代劇というジャンルは「こうあるべき」という概念を覆す。今の時代はもっとこういう形に描いてもいいのではないか。そんな大河ドラマや時代劇の可能性を広げるような描き方ができるからこそ2人は「天才」とも「奇才」とも言われるのでしょう。
木村拓哉の織田信長も脚本を担当
最後にあげておきたいのは、タイトルの付け方。三谷さんの『鎌倉殿の13人』というタイトルは大河で初めて算用数字を入れたほか、視聴者の想像力をくすぐるようなフレーズであり、最終話への伏線にもつながっていました。同様に古沢さんの問いかけるような『どうする家康』というタイトルも過去の大河ドラマにはなかったフレーズであり、こだわりを感じさせられます。
ここまで挙げてきたように、主人公のキャラクターと背景、主人公の天下取りより家族・家臣の物語を重視、個性的なキャラクターの描き分け、史実に笑いを交えた作風、大河ドラマらしからぬ女性の描き方、異色のタイトルと、6つもの類似点があるだけに、昨年の『鎌倉殿の13人』と同様に期待できるでしょう。
私自身、古沢さんに取材や番組収録で何度か会ったことがありますが、飾らず自然体の穏やかな物腰の人でした。しかし、口数が少ないこともあって、口をついて出る言葉はどれも本質を突くようなものばかり。「すべての人を上からも下からも見ないようなフラットな目線の持ち主だから人間描写の達人なのだろう」と感じました。
そんな古沢さんは木村拓哉さんが織田信長を演じる27日公開の映画『THE LEGEND & BUTTERFLY』の脚本も手がけています。『どうする家康』では同じジャニーズ事務所の岡田さんが織田信長を演じることもあって、「古沢さんがどう描き分けるのか」も注目を集めるでしょう。古沢さんは称賛を集め続けた三谷さんのような成功を収められるのか。その脚本にスポットが当たるたびに、三谷さんと比較されることになりそうです。
【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月30本前後のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』などの批評番組に出演し、番組への情報提供も行っている。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』『独身40男の歩き方』など。
