萩生田光一・政調会長(写真/AFP=時事)

萩生田光一・政調会長(写真/AFP=時事)

 政治評論家の有馬晴海氏は、菅氏の「派閥政治批判」と「増税批判」の狙いは一つと指摘する。

「昨年暮れの防衛増税問題の時、裏で安倍派内の反対論潰しに動いたのは森喜朗・元首相と見られています。最大派閥の安倍派は安倍晋三・元首相亡き後、ガタガタになったが、元会長の森さんが支えている。西村氏も、森さんの恩を受けた高市氏もその意向には逆らえない。2人はあれ以来増税反対を言わなくなった。

 菅さんはそれを見て、派閥政治では議員が声を上げられないと改めて思い知らされた。今回、菅さんが萩生田氏、世耕氏という別の安倍派幹部たちを取り込んで増税反対と派閥政治打倒を仕掛けているのは、安倍派の結束を揺さぶろうという側面もある」

 最大派閥の安倍派とともに自民党を仕切ってきた麻生派にも、菅氏は分裂の手を突っ込んでいる。

 前回の総裁選では麻生氏の反対を振り切って出馬した河野氏を全面的に支援し、昨年2月には、麻生派大幹部だった佐藤勉・元総務相ら4人の議員が派閥を退会して菅氏と連携した。

「麻生さんは先日話した時、河野太郎氏について『(総理には)まだ早ぇんだよ』と言っていた。河野氏はもはや麻生派に残るのは限界に来ていると見ている。菅さんが念頭に置いているのは派閥ではない政策勉強会で、派閥に残ったまま参加しても、派閥を抜けて参加してもいい。河野氏がそこに加わる可能性はある。そういう形で、菅さんは安倍派や麻生派に切り込んでいるように見える」(有馬氏)

 菅氏が派閥政治批判で最大の標的にしているのは、安倍派と麻生派の解体という見方だ。

決起は今年6月

「反増税・積極財政派」の菅氏と「増税派」の岸田首相は政治路線が正反対だ。

 一昨年の自民党総裁選前、閣僚不祥事などで支持率が30%を割った当時の菅首相は、岸田氏が先頭に立った菅降ろしによって首相の座を追われた。今度はその菅氏が、閣僚のドミノ辞任や増税方針で岸田首相の支持率が30%台ギリギリになったところで、「民意が離れた」と見て声を上げた。

 だが、自民党内に岸田政治への批判が高まっていても、派閥政治が残っている限り、反岸田勢力の結集は容易ではない。

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