説明会で「いい質問ですね」
文書が周知された後の12月20日には虐待問題についての保護者への説明会が開催された。そこでは、不安に苛まれた保護者の間からは疑問の声が噴出したのだ。
「世田谷区の指摘した6項目は主に心理的虐待事例ばかりで、被害者の園児は一人であるかのように報告されていますが、実際には氷山の一角でしかなかった。より酷い身体的虐待行為もあり、保護者からは『私の子は食事を与えてもらわなかったことがあります』、『子供がゲンコツやグリグリを受けた』などと6項目以外の虐待が存在することを指摘しましたが、園側は『数人の園児が虐待を受けていたことは把握してる』と答えるだけで虐待問題の全容を明かすことを渋り続けました。挙句の果てには再発防止について問われると、園側が『いい質問ですね』と返したのです。問題を起こしたのになぜ上から目線なのか? 怒りすら覚えました」(同前)
説明会では子どもが虐待を受けた保護者から次のような悲痛な実情が明かされた。
「(虐待を受けたのは)うちの子です。寝なかったので2時間食堂で放置(閉じ込められた)され、泣き叫んでドアをガタガタしても誰も助けてくれなかった。ガタガタしているうちにドアが外れてしまい、またドアの件で(X保育士から)叱責された。他の先生は近くにいるのに、なぜ気が付かないのでしょうか? 気づいて欲しいとお願いをすると、お迎えのとき(どの保育士からも)声をかけてもらえなくなりました。保護者に子どもを無事預けるまでは保育ではないでしょうか? 何も情報をくれず、声掛けもしてもらえない。安心して預けられない」(この事例については、保育園側は「調査では閉じこめた時間は10分程度であり監禁ではなかった」と回答)
12月20日の保護者会には世田谷区職員も身分を隠して出席しており、まるで保育園、世田谷区側が保護者を監視するかのような物々しい雰囲気の中で行なわれた。保育園側の回答は終始歯切れが悪く保護者のイライラが募るような内容だったという。「実態を明らかにして欲しい」と保護者側が重ねて質問を行なったことで、「時間がかかる」と渋っていた保育園側が折れて再調査を約束することになったのだ。