これだけ違う 岸田と菅政治

これだけ違う 岸田と菅政治

 政治評論家の有馬晴海氏は、菅氏がこのタイミングでポスト岸田の具体的な名前を出したことは大きな意味があるという。

「岸田政権は昨年末から閣僚辞任が相次ぎ、総理秘書官まで更迭され、目を覆いたくなるほどの体たらくです。支持率もジリ貧。自民党内でも岸田首相への不満が高まっている。それでも政権を維持できているのは、これという後継総理候補がいないからです。党内の不満派も、代わりの総理がいないから岸田降ろしが起きない。そこに菅さんは、“後継総理ならここにいるぞ”と名前を挙げ、新たな内閣をつくることができると国民と自民党に示したわけです」

 この発言に最も衝撃を受けたのは、岸田首相その人だった。

 岸田首相はどんなに支持率が下がっても、“どうせオレの代わりの総理はいない”と高をくくって菅氏の批判を黙殺してきたが、後継者発言を聞くと、慌てて菅氏を議員会館の事務所に訪ね、その足で自民党本部に向かって後見人の麻生太郎・副総裁に報告したのだ。

「前回の総裁選の候補の中で岸田氏のライバルとして生き残っているのは河野氏だけ。しかも、河野氏は国民の人気が高く、麻生派ながら岸田首相が頼みにする麻生副総裁とは折り合いが悪い。岸田首相にとっては扱いにくい人物です。

 もう一人の萩生田氏は旧統一教会問題を抱えているとはいえ、若手時代から安倍派の中で故・安倍氏に一番近かった。安倍派の後継者候補は他にもいるが、政治の混乱期には萩生田氏のように政局に強い人物が相応しい。安倍派会長の最有力候補と言っていい。菅さんが2人を後見するとなれば、それなりの数の自民党議員が河野氏なり萩生田氏なりを支持し始める可能性もある。菅氏の一撃が、最終的に、政権を倒す動きにつながっていく可能性は十分に考えられます」(有馬氏)

 党内では、河野氏がポスト菅の総裁選をにらんで麻生派から独立するのは時間の問題と見られており、そうなれば岸田政権を支える麻生派分裂につながる。岸田首相の政権基盤には打撃になる。

 萩生田氏が菅氏の支援で最大派閥・安倍派を継いで反岸田を鮮明にすれば、自民党では反岸田勢力が圧倒的な勢力になる。

 菅氏は、河野氏と萩生田氏という強力な“2人の刺客”を岸田首相に向けて放ったのだ。

※週刊ポスト2023年2月24日号

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