過去のWBCでは盗塁や小技を駆使して1点をもぎ取り、投手力と堅守で競り勝つ日本のスモールベースボールが結果につながった。だが、「時代は変わった」と2013年のWBCで戦略コーチを務めた橋上秀樹氏は語る。
「近年の国際試合はボークの判定が甘く盗塁が難しくなり、日本は機動力を活かした野球をしにくくなりました。そのため栗山監督は西武の源田壮亮(30)のような走力のある選手ではなく、パワーのあるカージナルスのラーズ・ヌートバー(25)を1番に置き、ヤクルトの若き三冠王・村上宗隆(23)を4番に据えて、打力重視の野球を目指すはずです」
さらに国際大会ならではの“忖度”をめぐっても監督の手腕が問われることになりそうだ。橋上氏はコーチを務めた自身の経験を元にこう語る。
「各チームの主力を集めたWBCでは首脳陣に、“選手をベンチに座りっぱなしにさせることでペナントに支障が出てはいけない”という意識が働きます。もし1次ラウンドで大勢が決した試合があれば、すべての選手に出場機会を与えるのではないか。ただし、栗山監督は“勝利が最優先”という考えが根底にあるので、負ければ終わりとなる準々決勝からは勝つための采配に徹するでしょう」
日ハム監督時代の2016年のシーズンでは、不動の4番とされた中田翔(33)に代打を送るなど、「勝利至上主義」の采配でファンを驚かせたこともあった。2010年の政権下で1度の日本一、2度のリーグ優勝を果たした名将だけに、WBCでも勝つためになりふり構わない采配が見られそうだ。
「今大会もタイブレーク制が導入され、延長10回以降は無死二塁から始まりますが、日本代表はチームにバント要員が少ないのがネック。1点を争う展開になれば、栗山監督は公言している通り、4番の村上であろうがバントのサインを出し、ランナーを進める選択をするはずです」(スポーツ紙デスク)
※週刊ポスト2023年3月3日号