国内

元2世信者・小川さゆりさんが明かす幼少期の生活苦「卒業アルバムは買えなかった」

小川さゆりさんが幼少期の生活苦を明かす

小川さゆりさんが幼少期の生活苦を明かす

 旧統一教会信者である両親から止められ、教団から妨害されても屈せず、顔を出して宗教2世としての被害を訴え続けてきた小川さゆりさん。そんな彼女が自らの半生を綴った手記『小川さゆり、宗教2世』が、来月刊行される予定だ。教会や両親への赤裸々な思いを綴った覚悟の手記の内容とは──。小川さんが告白する。【第1回】

 * * *

 両親は、1988年10月に韓国のメッコール(韓国の統一教会系企業・一和が製造する炭酸飲料)工場で行なわれた合同結婚式で、教祖である文鮮明にマッチングされる形で結婚しました。私はふたりの兄に続いて、3人目の「神の子」として生を受けました。

 物心がついた頃から、教会や母から純潔だけは守らなければならないと強く教え込まれました。祝福2世は生まれながらにして原罪のない神の子だから、血を汚してはいけないというのです。

『小学生のための原理講義』という教本には、淫乱の罪は「最大の罪」「死んでも消えない、大変な罪」と書かれていました。人間が寿命以外で死ぬ場合は、男女の愛の問題が関わっていることが多いと説明されています。そして、派手に着飾り、胸元の開いた服を着ている女の子のイラストが載っていて、そういう人は「サタンに利用されてしまう」といいます。

 結婚する人は神様が準備してくれているんだ。両親のような合同結婚式での結婚は、私の憧れでした。

 しかし学校での私は、家や教会で祝福された「神の子」ではなく、むしろ自分はみんなよりも劣っているように思っていました。私の家は他の家庭より貧しいのだと感じていたからです。

 私が3歳頃から通っていた保育園では、運動会で着る緑色の体操服を私だけが買ってもらえず、白いTシャツと水色のズボンを穿いていました。

 また、小学校の卒業アルバムは、我が家にとっては高価なものでした。上の兄ふたりが卒業アルバムを買ってもらえなかったことは母から聞いていて、私のときも母は学校に「うちはお金がないので卒業アルバムを買えません」と連絡していたそうです。

 卒業の日が近づくと、母に家でこんなことを言われました。

「いま、先生たちが職員室で、さゆりちゃんがどうしたら卒業アルバムを買ってもらえないことをみんなに悟られないようにできるかを話し合ってくれてるみたい」

 母は先生たちについて、「すごくいい先生たちだね」「堕落世界にもいい人たちはいるからね。そういう先生たちに本当は神様のことを教えてあげないといけないんだよね」と言っていました。

 私は心がずっと黒い霧で覆われた気持ちになっていました。そんな配慮をされる自分が恥ずかしいという思いでした。

 卒業式当日は、教室で卒業アルバムを配るのではなく、職員室へひとりずつ卒業アルバムを取りに行く形になり、先生たちは紙に印刷した手作りのアルバムを私に渡してくれました。私はそのアルバム代わりのものを受け取ったとき、心の底から嬉しいと思うことができませんでした。そこまで先生たちにさせてしまったことが、申し訳なく恥ずかしかったのです。

第2回につづく

※週刊ポスト2023年3月3日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

詐称疑惑の渦中にある静岡県伊東市の田久保眞紀市長(HP/Xより)
《まさかの“続投”表明》田久保眞紀市長の実母が語った娘の“正義感”「中国人のペンションに単身乗り込んでいって…」
NEWSポストセブン
大谷が購入したハワイの別荘の広告が消えた(共同通信)
【スクープ】大谷翔平「25億円ハワイ別荘」HPから本人が消えた! 今年夏完成予定の工期は大幅な遅れ…今年1月には「真美子さん写真流出騒動」も
NEWSポストセブン
フランクリン・D・ルーズベルト元大統領(写真中央)
【佐藤優氏×片山杜秀氏・知の巨人対談「昭和100年史」】戦後の日米関係を形作った「占領軍による統治」と「安保闘争」を振り返る
NEWSポストセブン
運転席に座る広末涼子容疑者
《追突事故から4ヶ月》広末涼子(45)撮影中だった「復帰主演映画」の共演者が困惑「降板か代役か、今も結論が出ていない…」
NEWSポストセブン
江夏豊氏(右)と工藤公康氏のサウスポー師弟対談(撮影/藤岡雅樹)
《サウスポー師弟対談》江夏豊氏×工藤公康氏「坊やと初めて会ったのはいつやった?」「『坊や』と呼ぶのは江夏さんだけですよ」…現役時代のキャンプでは工藤氏が“起床係”を担当
週刊ポスト
殺害された二コーリさん(Facebookより)
《湖の底から15歳少女の遺体発見》両腕両脚が切断、背中には麻薬・武装組織の頭文字“PCC”が刻まれ…身柄を確保された“意外な犯人”【ブラジル・サンパウロ州】
NEWSポストセブン
山本由伸の自宅で強盗未遂事件があったと報じられた(左は共同、右はbackgrid/アフロ)
「31億円豪邸の窓ガラスが破壊され…」山本由伸の自宅で強盗未遂事件、昨年11月には付近で「彼女とツーショット報道」も
NEWSポストセブン
佳子さまも被害にあった「ディープフェイク」問題(時事通信フォト)
《佳子さまも標的にされる“ディープフェイク動画”》各国では対策が強化されるなか、日本国内では直接取り締まる法律がない現状 宮内庁に問う「どう対応するのか」
週刊ポスト
『あんぱん』の「朝田三姉妹」を起用するCMが激増
今田美桜、河合優実、原菜乃華『あんぱん』朝田三姉妹が席巻中 CM界の優等生として活躍する朝ドラヒロインたち
女性セブン
別府港が津波に見舞われる中、尾畠さんは待機中だ
「要請あれば、すぐ行く」別府湾で清掃活動を続ける“スーパーボランティア”尾畠春夫さん(85)に直撃 《日本列島に津波警報が発令》
NEWSポストセブン
モンゴルを公式訪問された天皇皇后両陛下(2025年7月16日、撮影/横田紋子)
《モンゴルご訪問で魅了》皇后雅子さま、「民族衣装風のジャケット」や「”桜色”のセットアップ」など装いに見る“細やかなお気遣い”
大谷家の別荘が問題に直面している(写真/AFLO)
大谷翔平も購入したハワイ豪華リゾートビジネスが問題に直面 14区画中8区画が売れ残り、建設予定地はまるで荒野のような状態 トランプ大統領の影響も
女性セブン