ダルビッシュと大谷は同じチームでのプレーはないが、親交はある（共同通信社）
大阪府の南河内地域に位置する羽曳野市。この地に生まれ育ったダルビッシュが少年時代に所属した野球チーム「羽曳野ボーイズ」を率いる監督の山田朝生さんは、素顔のダルビッシュを知るひとりだ。
「有は、“WBCではおれたちの野球をやろう”って言いたいんですよ」
そう山田さんは言う。
「“負けたら日本に帰れない”なんて考え方をチームから取り除こうとしているんです。それよりも、おれたちの野球をやればいいからという思い。栗山野球を選手に植えつける手助けをしつつ、侍ジャパンの仲間と野球を楽しみたいという気持ちが強いのだと思います」（山田さん）
山田さんは少年時代のダルビッシュと本気でぶつかり合い、時には容赦なく叱り飛ばした。おかげでプロ入りを控えたダルビッシュが「世の中でいちばん怖いのは怒ったときの山田監督。お化けより怖い」と語ったほど。だからこそお互いの信頼関係が生まれ、いまもダルビッシュは帰郷すると山田さんのもとを訪れる。その山田さんは、今大会におけるダルビッシュのさまざまな行為の根底には「球界への恩返しがある」と言う。
「メジャーに行った当初は、日本で培ってきた自分の野球が通用するか懸念していたけれど、有は努力や節制を重ねて実力を証明しました。自分が通用したことで、今大会では日本の野球そのものがどれだけ素晴らしいかを世界中に発信したいのでしょう。
彼が自分の経験を惜しげもなく若い選手に伝えるのはそのためです。ぼくなんかは、プロとして培った自らの財産を簡単にほかの選手に教えるのはもったいないと思うけど、有は“みんながレベルアップしたらいいじゃないですか”という考え。だから自分が得た技術を全部オープンにするんです」（山田さん）
シャイでぶっきらぼうなところも見られるダルビッシュだが、心の中では多くの人への「感謝」を抱いていると山田さんが続ける。
「普通のピッチャーは野手が守備についてからマウンドに上がるけど、有はいちばんにマウンドに駆けていきます。あれはチームメートや見に来てくれているファンに感謝する気持ちの表れで、“よろしくお願いします”という心が込められているんです」
WBCでもマウンドに駆けあがる姿が見られるだろう。
※女性セブン2023年3月23日号
