山口放火殺人・男の自宅に残された貼り紙この張り紙は大きな話題になった(時事通信フォト)

山口放火殺人・男の自宅に残された貼り紙この張り紙は大きな話題になった(時事通信フォト)

裏切られた「Uターンハイ」

「すごいバーを作って、外は飲み屋のようにネオンがつくようにしちょった。中もお店みたいじゃったよ」

「シルバーハウスHOMI」を訪れたことのある村人は言う。だがすぐに、誰もそこに行かなくなった。

「そうするためには、やっぱり人間関係がないとねえ」

 ワタルは自作の新宅を皆の新しい拠点として、郷集落を盛り上げようと希望に胸を膨らませていたが、真っ暗な村に一軒だけネオンが輝くさまは不釣り合いであり、浮いていた。そしてワタル自身も、まず信頼関係を築く前に、近代的な家の設備で村人たちを呼び寄せようとしたことが裏目に出た。「Uターンハイ」とでも形容できるような状態になっていたのだろう。

 都会から戻ってきた俺が、こんなにすごい家を作ったぞ。これで村も盛り上がる。さあ、皆ここに集まってくれ……。そんな思いを抱いていたのではないだろうか。

 しかし、年長者ばかりのこの村で、それは通用しなかった。やはり村に戻ってきたからには自治会に参加し、数カ月に一度行われる草むしりなどの仕事にも精を出し、先輩となる村人たちとの調和を図るのが第一だろう。冷静に見てもたしかに、それらの「手順」を飛び越して村人たちに家に来てもらうという案は強引に映る。

 歓迎会の段階から、ワタルは村人にあまり良い印象を抱かれてはいなかった。都会帰りでハイな状態のワタルは、村人たちにとっては、うっとうしかったのかもしれない。この村を盛り上げるためのワタルなりの村おこし……新宅を村人たちの交流の拠点とする案は、あっさりと年長者たちに否定されてしまったのだ。

【了。前編から読む

文庫『つけびの村 山口連続放火殺人事件を追う』から一部抜粋

関連記事

トピックス

お笑いコンビ「ガッポリ建設」の室田稔さん
《ガッポリ建設クズ芸人・小堀敏夫の相方、室田稔がケーブルテレビ局から独立》4月末から「ワハハ本舗」内で自身の会社を起業、前職では20年赤字だった会社を初の黒字に
NEWSポストセブン
”乱闘騒ぎ”に巻き込まれたアイドルグループ「≠ME(ノットイコールミー)」(取材者提供)
《現場に現れた“謎のパーカー集団”》『≠ME』イベントの“暴力沙汰”をファンが目撃「計画的で、手慣れた様子」「抽選箱を地面に叩きつけ…」トラブル一部始終
NEWSポストセブン
母・佳代さんのエッセイ本を絶賛した小室圭さん
小室圭さん “トランプショック”による多忙で「眞子さんとの日本帰国」はどうなる? 最愛の母・佳代さんと会うチャンスが…
NEWSポストセブン
春の雅楽演奏会を鑑賞された愛子さま(2025年4月27日、撮影/JMPA)
《雅楽演奏会をご鑑賞》愛子さま、春の訪れを感じさせる装い 母・雅子さまと同じ「光沢×ピンク」コーデ
NEWSポストセブン
自宅で
中山美穂はなぜ「月9」で大記録を打ち立てることができたのか 最高視聴率25%、オリコン30万枚以上を3回達成した「唯一の女優」
NEWSポストセブン
「オネエキャラ」ならぬ「ユニセックスキャラ」という新境地を切り開いたGENKING.(40)
《「やーよ!」のブレイクから10年》「性転換手術すると出演枠を全部失いますよ」 GENKING.(40)が“身体も戸籍も女性になった現在” と“葛藤した過去”「私、ユニセックスじゃないのに」
NEWSポストセブン
「ガッポリ建設」のトレードマークは工事用ヘルメットにランニング姿
《嘘、借金、遅刻、ギャンブル、事務所解雇》クズ芸人・小堀敏夫を28年間許し続ける相方・室田稔が明かした本心「あんな人でも役に立てた」
NEWSポストセブン
第一子となる長女が誕生した大谷翔平と真美子さん
《真美子さんの献身》大谷翔平が「産休2日」で電撃復帰&“パパ初ホームラン”を決めた理由 「MLBの顔」として示した“自覚”
NEWSポストセブン
不倫報道のあった永野芽郁
《ラジオ生出演で今後は?》永野芽郁が不倫報道を「誤解」と説明も「ピュア」「透明感」とは真逆のスキャンダルに、臨床心理士が指摘する「ベッキーのケース」
NEWSポストセブン
渡邊渚さんの最新インタビュー
元フジテレビアナ・渡邊渚さん最新インタビュー 激動の日々を乗り越えて「少し落ち着いてきました」、連載エッセイも再開予定で「女性ファンが増えたことが嬉しい」
週刊ポスト
主張が食い違う折田楓社長と斎藤元彦知事(時事通信フォト)
【斎藤元彦知事の「公選法違反」疑惑】「merchu」折田楓社長がガサ入れ後もひっそり続けていた“仕事” 広島市の担当者「『仕事できるのかな』と気になっていましたが」
NEWSポストセブン
お笑いコンビ「ダウンタウン」の松本人志(61)と浜田雅功(61)
ダウンタウン・浜田雅功「復活の舞台」で松本人志が「サプライズ登場」する可能性 「30年前の紅白歌合戦が思い出される」との声も
週刊ポスト