よって、テレビ局のメイク室というのは、全ての出演者が出入りする場所ではない、実はとても限られたエリアなのだ。曜日や時間帯にもよるが、筆者が番組出演のためメイク室に滞在する30分程の間に挨拶を交わすタレントは多くても6~7 人ほど。全く誰にも会わないときもあるので、前述の北澤氏が、そこに出会いがあったのかと驚き、中山が「ミラクル」と咄嗟に返したのも理解できる。
前述のとおり、人気俳優がメイク室に現れるというのも稀有なこと。いくら番宣のために来局したとはいえ、中村クラスの俳優ならば普通は自身の楽屋でメイクするはず。いかに中村が飾らない人であるかという証拠であろう。
メイクルームは性格や人柄がバレる場所
数は極めて少ないが、タレントやアナウンサーとメイクさんが結婚に至るケースもある。一般の方でも、サロンの美容師に相性のいい人とそうではない人がいるように、肌や髪を触られている内に身も心も委ね、交際に繋がっていくのだ。
さらに、メイク室というのは人柄が出てしまう場所。不機嫌な顔で入ってきたり、メイクさんたちに「よろしく」も「ありがとう」も言わないようなタレントがいたりすると、そうしたウワサは徐々に広まっていく。
すごいクセ毛で、メイクさんが懸命にセットした後、「なぜかキャップを被って楽屋に戻られてしまうので、またスタジオでセットし直さなければならない芸人さんが居た」という話を聞いたことがある。
また、どこから見ても清純派の人気フリーアナウンサーは、メイク中ずっと不機嫌で、「誰かを“顎で使う”という人を初めて見ました」とメイクさんが苦笑しながら話してくれた。必要なメイク道具や化粧品などを本当に顎で指しながらメイクさんに持ってこさせたのだという。
メイクさんに限らず、ピンマイクを付けてくれる音声さんやカンペを出すフロアディレクターさんら、いわゆる裏方さんに対し、偉ぶったり、酷い態度をとったりするタレントは、同様に悪い評判が広がり、何かあったとき、助けてもらえなくなる。もちろん、その逆もあり、裏方さんに人気のタレントは評判が評判を呼び、仕事を増やす傾向が今は間違いなくある。
恐らく、中村倫也が水卜アナを見初めたのは、すっぴんの可愛さだけでなく、メイクさんへの態度や、出入りするタレントやアナウンサーへの言葉遣いや気遣いなどが完璧な水卜アナの人柄に対してもグッときたのではないか。
よって、メイク室から始まる恋は「ある」のだ。好みの素顔だけでなく、性格美人、性格イケメンを見つけるには最適な場所かもしれない。
◆山田美保子
『踊る!さんま御殿!!』(日本テレビ系)などを手がける放送作家。コメンテーターとして『ドデスカ!』(メ~テレ)、『アップ!』(同)、『1周回って知らない話』(日本テレビ系)、『サンデージャポン』(TBS系)に出演中。CM各賞の審査員も務める。