アメリカの一部都市は「ソーダ税」を導入
そもそも、「超加工食品」の定義は2009年、ブラジル・サンパウロ大学の研究チームが公表した、あらゆる食品を加工の性質や目的、程度に応じて分類する「NOVA分類」に端を発する。その分類は「生鮮食品、ほぼ無加工の食品」「加工食品の材料」「加工食品」「超加工食品」の4つに区分された。そのうち最も加工度が高いとされるのが超加工食品だ。
「大量生産された菓子パンやインスタント食品、保存料を使用した肉加工品など、家庭で調理する際には使わない添加物や油脂などを過剰に加えた食品のことを示します。炭酸飲料を含む清涼飲料水やスナック菓子、チョコレート、ケーキ、アイスクリーム、ハンバーガー、チキンナゲットなどが超加工食品にあたります」(大西さん)
前述の通り、私たちがよく口にするインスタントラーメンやコンビニ弁当、冷凍食品やスーパーマーケットの総菜なども超加工食品に該当する。すでに欧米では健康に対するリスクが考慮され、「超加工食品に課税して消費量を減らすべき」との議論が盛んだ。
「フランスでは、超加工食品の消費量を20%以上減らすことを政府が呼びかけています。また、塩分や糖分、脂肪、栄養素などを分析し、加工食品をA〜Eの5段階に区分し、それをパッケージに表示する『ニュートリ・スコア』というシステムが発案されました。ほかにも、『フード・ワッチ』という食品監視NGOが“子供の健康に悪い食品の宣伝はやめてほしい”と主要スーパーに申し入れるなど、各方面で超加工食品を制限する取り組みが進んでいます」(羽生さん)
対策を講じているのはアメリカも同様だ。
「アメリカの一部の都市では、砂糖入りの炭酸飲料に課税する『ソーダ税』を導入しています」(大西さん・以下同)
各国がこぞって国民の口に超加工食品が入らないように対応している背景には、膨大な研究データが存在する。
《NOVA分類のうち最も加工度の高い超加工食品を、最も加工度の低い「生鮮食品、ほぼ無加工の食品」に10%置き換えると頭頸部がん、結腸がん、肝細胞がんのリスクが減る》
今年3月、英インペリアル・カレッジ・ロンドンの研究者などが世界的な医学雑誌『ランセット』に発表した論文は、超加工食品とがんの関係をこう論じた。
仏リヨン国際がん研究所の研究者などが今年1月に『ランセット』に発表した論文にも、超加工食品の摂取量が10%増えると、がんによる死亡率が6%増大したことや、なかでも卵巣がんによる死亡率は30%も増えたことが示されている。
「仏パリ第13大学らの2018年の研究では、超加工食品の消費が10%増えるごとにがん全体の発症リスクが12%増え、乳がんの発症リスクは11%増えました。米ハーバード大学などの2022年の研究でも、超加工食品を食べる量が最も多いグループの男性は、最も少ないグループの男性に比べて大腸がんの発症リスクが29%高くなったことが明らかになっています」(大西さん)