2度の「信夫」発言、警官に見守られながらお見送り
会場のホテルは大ホールを貸し切っていて、お値段は「ホールだけの利用なら2時間10万円前後ほどから」(関係者)だという。ホール前方から約160席の椅子が並べられていて、その後ろにマスコミのスペースが設けられていた。
会場に到着したのは19時頃だったが、まだ支援者らはほとんど来ておらず。スタッフたちも無言で準備を進め、張り詰めた空気に満たされていた。スタッフに話を聞いた。
「正直、結果がわからない。時事通信の午前中の速報データでは平岡氏に負けていた。もちろん勝つと信じているが、早い時間では当落が分からないだろう。信千世さんも別室でごく限られた幹部たちとずっと待っている。当落が出るまでこのホールには来ないよ」
20時前に支援者らが一斉に駆け付け、160席ほどの椅子はほとんど埋まった。20時になると、会場のプロジェクターにNHKの選挙特番が映し出された。支援者は食い入るように見つめていたが、突如、チャンネルが変わり、プロジェクターには裏番組の『世界の果てまでイッテQ』(日本テレビ系)が。スタッフが間違えてチャンネルを押してしまったのだろうが、これには支援者たちも大爆笑──そんなタイミングで速報が入り「衆院山口2区補欠選挙 岸 信千世氏(自・新)初当選確実」のテロップが。
まさかバラエティー番組のテロップで当選を知るという何とも締まらない結果だったが、会場は一斉の拍手。涙を流す女性もいた。直後に信千世氏が登場するや、支援者は全員立ち上がり、壇上に向かう信千世氏に「おめでとう」という祝福の声を投げかけた。
信千世氏が壇上にあがると、まずは県議会議長が「皆さま、ありがとうございます。岸信千世衆議員、立派な成績で当選されました」と挨拶。続いて万歳三唱の音頭をとろうとしたのだが、議長は「衆議院議員、岸信“夫”当選」とまさかの言い間違い。会場は笑いに包まれたが、当の信千世氏は苦笑いするばかり。締まらない事例が立て続けにおき、マスコミ陣からは失笑も漏れた。
取り直して、支援者らと3度「万歳」と手を上げ、最後に深々と頭を下げた信千世氏。「厳しい戦いでしたけど、ご支援頂いた全ての皆様のおかげだと思います」と、自ら厳しい選挙であったことを認め、支援者の感謝を述べていた。
その後は支援者らとの撮影に。まずウグイス嬢との撮影が行なわれたが、登場したのは信千世氏の顔がプリントされたケーキ。これには信千世氏も驚いたようだが、嬉しかったようで笑顔が見られた。ほかにも鯛を贈呈され、片手で持ち上げるなど信千世氏は大忙し。一挙手一投足を支援者、マスコミはこぞって撮影していた。なんとここでも司会が信千世氏を「岸信“夫”」と言い間違えたのだが、この瞬間以外は笑顔で壇上に立ち続けた。
式は1時間ほどで終了し、最後は信千世氏が支援者全員のお見送り。支援者一人一人の目を見て握手をしながら会話していた信千世氏だが、会場の片隅には警官が。秘書らしき人物と会話をしながらその様子を注視していた。
支援者がいなくなった会場でマスコミの囲み会見に応じた信千世氏。記者から「世襲批判が大きかったと思うが、どう向き合ってどう乗り越えていくか」と質問されると、言葉を選びながらも「色々なご意見の方がおられますので、各個人のご意見だと思います。それを受け止めて政治活動、自分の糧にしていきます」と言いきった。
スタートラインに立った信千世氏。世襲批判を吹き飛ばす活動ができるかどうか、これからが本番だ。