佐々木朗希にピッチングを指導するダルビッシュ有(時事通信フォト)
その一方で、WBC組の打撃陣に目を向けると開幕から調子が上がらないメンバーも。昨シーズン三冠王を獲得したヤクルト・村上宗隆(23)は打率1割台と低迷し、本塁打数もまだ2本に留まっている(4月20日時点)。すでにリーグトップの巨人・中田翔(34)とは3本の差がついている。江本氏は、村上のバッティングについてこう憂慮していた。
「明らかに“村神様”ではないですね。気持ち的な問題も大きいんだと思います。昨シーズン56本のホームランを打ってしまったがゆえに、それが基準となってしまっている。ファンも45本ではよくやったといわないでしょう。60本くらい打てば満足させられると思いますが、ありえないことです。村上が45本で十分だと思えればいいが、56本が基準となることでそうしたプレッシャーはストレスでしょうし、バッティングがおかしくなるのも無理はないですよ」
中畑氏も「56本打ったのは凄いことなんだが、ここからが大変ということを自分自身でも感じてしまっているんじゃないかな」と江本氏の意見に賛同した。
それに対して達川氏は、「村上のバッティングにもダルビッシュの存在が影響を与えている」と語る。
「今シーズンのセの投手陣は、村上にはホームランさえ打たれなければいいという配球をしている。言い方が悪いけど、みんな村上に正々堂々と勝負しに来ている。外にボール球、インコース高目の厳しいところを思い切って攻めている。相手が左投手なら、村上が外の低目スライダーを打ちにいっては引っかけてセカンドゴロ。その背景にも“ダルビッシュの助言”があると思っています。
(故障で離脱するまでWBCに参戦していた)広島・栗林良吏(26)は、ダルビッシュから“フライボール革命によって最近の打者は下からバットが出る傾向にあるから、カットボールは低目ではなくベルト(高目)に投げろ。そうすれば1球で仕留められる”と言われたそうです。その助言が、セの投手陣の攻め方に変化を与えているんだと見ています。ここ20年ほどはそうした投球術は見られませんでしたが、高目にカットを投げられると、アウトローも効果的になる。昔のピッチャーには基本中の基本だったが、現在のプロ野球では結果的に攻撃的なピッチングとなっていますね」
ダルビッシュは日本球界に大きな土産を残していったのかもしれない。