「ロサンゼルスです」
敬子が答えると、力道山は膝を打ってこう言った。
「ちょうどよかった。ロスにいるグレート東郷さんに渡したいものがあるんで、持っていってもらえないでしょうか」
敬子はこれを「また会うための口実」と受け取ったが、美濃部の回想はそうでもなく「敬子さんに荷物を渡したいんだが、直接電話していいもんだろうか」と間に立ってほしいことを暗に匂わせたとある。これには美濃部も閉口して「紹介は済んでいるんだから、直接連絡すればいいでしょう」と答えた。
力道山と田中敬子の交際が始まった。
(文中敬称略。以下次回、毎週金曜日配信予定)