芸能

爆笑と大喝采!劇団四季の超人気作『クレイジー・フォー・ユー』に沼落ちする人続出

タップダンスに夢中のボビーは、踊り子たちと共に華麗な舞台に立つことを夢見る

タップダンスに夢中のボビーは、踊り子たちと共に華麗な舞台に立つことを夢見る

 劇団四季創立70周年記念公演として、劇団四季ミュージカル『クレイジー・フォー・ユー』横浜公演が開幕し、連日好評を博している。8年ぶりに上演されるとあって、「再演を待ち望んでいた」という声、そして「客席の熱量も最高! 拍手で劇場が揺れていた」「無条件で楽しかった」という絶賛の声が相次いでいる。

 本作は、1992年に製作されたブロードウェイミュージカルで、最優秀作品・衣裳・振付の3部門でトニー賞を受賞した“ミュージカルコメディの金字塔”。劇団四季ではブロードウェイ初演の翌年、1993年に初演を果たして以来、上演回数が1900回を超えた人気作でもある。

 魅力の1つは、“アメリカ音楽の魂”と呼ばれるガーシュウィン兄弟の珠玉のナンバーをたっぷり堪能できることだろう。誰もが一度は聞いたことがある魅力的なメロディーはもちろんのこと、日本語歌詞はガーシュウィン愛好家として知られる故・和田誠さんと、映画『アナと雪の女王』やディズニーミュージカル『アラジン』の訳詞を手がけた高橋由美子(現・高橋知伽江)さんが担当。聞きどころも満点だ。

 さらに、恐ろしく難易度の高いのに、そう感じさせないほど軽快なタップダンスをはじめ、ロープや電話機、パエリア皿など、身近な道具を使った斬新なダンスには、「えっ、こんな使い方ありなの!?」と思わず目が釘付けになる。

寂れた町に突如降って湧いた、ショーの上演。町の男たちは踊り子たちと猛レッスン。ロープを持った女性をウッドベースに見立てた演出は本作の見どころ

寂れた町に突如降って湧いた、ショーの上演。町の男たちは踊り子たちと猛レッスン。ロープを持った女性をウッドベースに見立てた演出は本作の見どころ

 そのうえ、至る所に笑いのタネが振り撒かれたラブ・コメディゆえに、キャラクターのセリフはもちろん、一挙手一投足まで目が離せない。

 よく、文学で人を泣かせるのは簡単だが、笑わせるのは難しいと言われるが、ミュージカルも同じだろう。せりふ回しといい間合いといい、表情も演技も、とにかく最初から最後まで、観る人の笑いと笑顔のツボを突いてくる。

 こんなに楽しませておきながら、ただのラブストーリーで終わらないところも、またこの作品のすごいところ。不況下でも夢を持ち、劇場再建へと明るく前向きに生きる登場人物たちの姿は、コロナ禍で陰鬱たる生活を強いられている私たちに訴えかけてくるものがあるのだ。

ボビーを拒絶する一方で、ボビーが変装した大物プロデューサー・ザングラーに恋をしてしまうポリー。奇妙な三角関係が進んでいく

ボビーを拒絶する一方で、ボビーが変装した大物プロデューサー・ザングラーに恋をしてしまうポリー。奇妙な三角関係が進んでいく

ボビーを追いかけてデッドロックを訪れたアイリーンだったが、運命の出会いが待ち構えていた

ボビーを追いかけてデッドロックを訪れたアイリーンだったが、運命の出会いが待ち構えていた

 そんな話題作『クレイジー・フォー・ユー』の主演を務める2人、ボビー・チャイルド役の萩原隆匡とポリー・ベーカー役の町 真理子に話を聞いた。

* * *
――萩原さんは2015年にはボビー役で出演しています。ボビー役を8年ぶりに再び演じてみた感想は?

萩原「前回、ボビー役の記憶がないんですよ…。気絶して終わったって感じで(笑い)。今回も相変わらず無我夢中で、先ほどの通し稽古の記憶もあまりない(笑い)。ずっと出ずっぱりで、ずっと踊って、しかもタップも、簡単そうに見えるものでも結構大変なんです。

 ただ、ストローマンさんの振り付けはやっぱり天才だと思いますね。ただのダンスではなく、セリフみたいに感情をのせてドラマを作っていけるのは本当にすごい」

――稽古の中で、新たに気づいた点はありますか?

萩原「悩みすぎない、ということですね。いつも“めちゃくちゃ頑張って全力を尽くさないといけない”って考えがちなんですが、それ自体はすごくいいことだけど、頑張りすぎるとコメディみたいに自然な掛け合いが大切なときにはちょっとつまらなくなっちゃうんです。それより“ぱぱーん”とやっちゃった方が意外と良かったりする。悩みすぎるタイプのぼくとしては、ボビーにすごく助けられました」

――町さんは初出演ですが、その意気込みは?

町「大好きな作品だったので、プレッシャーもありますが、素敵な音楽、振り付け、歌を歌えていることが毎日楽しいです。幸せな気持ちでいっぱいですね。今日みたいに客席に大勢のかたが入った通し稽古は初めてだったのですが、すごく一体感を感じました。お客さんが入って完成する作品だなと感じます。

 ただひとついうと、私は関西人なので、笑いを取りに行きたくなっちゃうところがあって…(笑い)『ポリーは笑いを取りに行かなくていいよ』って言われているんですが、ボビーがウケてると羨ましくなっちゃいます。」

――この作品をいま届ける意味をどう感じていますか?

萩原「前々回の公演時(2010年2月〜2011年9月)は、東日本大震災も経験しました。当時公演を止めなかったのは、そんな中でも観に来ていただける方々に、その時間だけでも現実を忘れていただけたらという理由から。

 もちろんそれが主目的ではないですし、ぼくらは常に作品に真摯に向き合うことしかできないのですが、もし結果としてお客さんが笑えて気持ちが軽くなったら、それ以上幸せなことはないんですよね。まさに(劇中歌『I Got Rhythm』にある)“お金もいらない”、そのくらいの幸福感はあると思っています」

町「この作品はラブ・コメディではありますが、復興や再生というテーマも入っています。寂れた炭坑の町・デッドロックにいるおじさんたちが、『Slap That Bass』という曲に乗ってどんどん生き生きしていくのが、何よりめちゃくちゃいい顔で、それを見ているだけで感動して、胸がいっぱいになるんです。

 いまの世の中にきっと通じるところがあると思うので、お客さまにも元気になっていただけるものがあればいいなと思っています」

萩原「ぼくからも補足すると、この作品の振り付け(注:ロープやつるはしを使った演出)は、スーザンさんが子供の時に思いついたアイディアなのだそうです。だから、ピュアな動きになるんだと聞きました。どうピュアなのかを厳密に言葉にはできないですけど、計算してない感じはなんとなくわかりますよね。ぼくは主役をやらせてもらっていますけど、他の人たちも、何かを手に取って何かをするにはそのための“衝動”を持っていて、人生の主役であるんですよ。そういう衝動もこの作品の魅力だと思います」

関連キーワード

関連記事

トピックス

神田沙也加さんはその短い生涯の幕を閉じた
《このタイミングで…》神田沙也加さん命日の直前に元恋人俳優がSNSで“ホストデビュー”を報告、松田聖子は「12月18日」を偲ぶ日に
NEWSポストセブン
(2025年11月、ラオス。撮影/横田紋子)
熱を帯びる「愛子天皇待望論」、オンライン署名は24才のお誕生日を節目に急増 過去に「愛子天皇は否定していない」と発言している高市早苗首相はどう動くのか 
女性セブン
「台湾有事」よりも先に「尖閣有事」が起きる可能性も(習近平氏/時事通信フォト)
《台湾有事より切迫》日中緊迫のなかで見逃せない「尖閣諸島」情勢 中国が台湾への軍事侵攻を考えるのであれば、「まず尖閣、そして南西諸島を制圧」の事態も視野
週刊ポスト
裁判が進むにつれ山上徹也被告にも徐々に変化があらわれたという(写真/共同通信社)
《引き金を引くことを生きる目的に》山上徹也被告が法廷で初めて感じた“安倍元首相の命を奪った”という強烈なリアリティー 鈴木エイト氏が傍聴席で見た“犯人の実像”
週刊ポスト
ハワイ別荘の裁判が長期化している(Instagram/時事通信フォト)
《大谷翔平のハワイ高級リゾート裁判が長期化》次回審理は来年2月のキャンプ中…原告側の要求が認められれば「ファミリーや家族との関係を暴露される」可能性も
NEWSポストセブン
今年6月に行われたソウル中心部でのデモの様子(共同通信社)
《韓国・過激なプラカードで反中》「習近平アウト」「中国共産党を拒否せよ!」20〜30代の「愛国青年」が集結する“China Out!デモ”の実態
NEWSポストセブン
大谷翔平と真美子さん(時事通信フォト)
《自宅でしっぽりオフシーズン》大谷翔平と真美子さんが愛する“ケータリング寿司” 世界的シェフに見出す理想の夫婦像
NEWSポストセブン
山上徹也被告が法廷で語った“複雑な心境”とは
「迷惑になるので…」山上徹也被告が事件の直前「自民党と維新の議員」に期日前投票していた理由…語られた安倍元首相への“複雑な感情”【銃撃事件公判】
NEWSポストセブン
お騒がせインフルエンサーのボニー・ブルー(時事通信フォト)
《潤滑ジェルや避妊具が押収されて…》バリ島で現地警察に拘束された英・金髪美女インフルエンサー(26) 撮影スタジオでは19歳の若者らも一緒だった
NEWSポストセブン
山本由伸選手とモデルのNiki(Instagramより)
「球場では見かけなかった…」山本由伸と“熱愛説”のモデル・Niki、バースデーの席にうつりこんだ“別のスポーツ”の存在【インスタでは圧巻の美脚を披露】
NEWSポストセブン
モンゴル訪問時の写真をご覧になる天皇皇后両陛下(写真/宮内庁提供 ) 
【祝・62才】皇后・雅子さま、幸せあふれる誕生日 ご家族と愛犬が揃った記念写真ほか、気品に満ちたお姿で振り返るバースデー 
女性セブン
「週刊ポスト」本日発売! プロ野球「給料ドロボー」ランキングほか
「週刊ポスト」本日発売! プロ野球「給料ドロボー」ランキングほか
NEWSポストセブン