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なぜフジテレビは大規模なドラマリクエスト企画を連発するのか 「35年間490作のリスト」から見える狙い

頻繁な社長交代が経営にどう影響するか(フジテレビ本社)

なぜドラマの大型企画を連発?(写真はフジテレビ本社)

 テレビ局がこれほど大規模なドラマリクエスト企画を行うことはこれまであまりなかったのではないだろうか。フジテレビのドラマリクエスト企画『フジテレビドラマプレイバック!』が注目を集めている。フジは3月にもドラマを無料配信する大型企画を行ったばかり。こうした企画を連発する狙いとは? コラムニストでテレビ解説者の木村隆志さんが解説する。

 * * *
 フジテレビのドラマリクエスト企画『フジテレビドラマプレイバック!』がゴールデンウィーク初日の4月29日からスタートし、6月30日までの約2か月間にかけて開催されます。

 これは視聴者が「もう一度見たい」と思うドラマを募集するオンライン企画で、選ばれた作品は『+ストリーム!』(月~金曜、第1部13時50分~・第2部14時48分~、関東ローカル)で8月に放送されるほか、TVerとFODでの無料配信も予定されています。

 特筆すべきは、応募期間が2か月超もの長期にわたる上に、「何回でも応募できる」こと。「1人1作」に絞ったリクエスト企 画は、知名度の高さが結果に直結しがちですが、「何回でも応募可」にすることで、より視聴者の熱が高い作品が選ばれやすくなることが予想されます。

 驚かされたのは、企画の特設ページに年表形式で記載した作品リスト「フジテレビドラマヒストリー」。1988年1月期の『君の瞳をタイホする!』『ときめきざかり』『窓を開けますか?』から、2023年1月期の『女神の教室~リーガル青春白書~』『スタンドUPスタート』『忍者に結婚は難しい』まで、35年間490作のタイトルが並ぶリストは壮観で、「思わずリクエストしたくなる」という人が増えるのではないでしょうか。

 この企画はフジテレビの開局65周年を記念した仕掛けの1つで、長年見続けてくれた視聴者への感謝がベースにあることは間違いないでしょう。しかし、現在放送されている春ドラマの視聴率ダウンや、自局系の動画配信サービス・FODの売上ダウンにつながるリスクも考えられる中、なぜここまで大規模なリクエスト企画を行うのでしょうか。

過去作のリストが関心を集める

 まず今回の大規模なリクエスト企画が「現在放送されている春ドラマの視聴率ダウンや、自局系の動画配信サービス・FODの売上ダウンにつながるのか」と言えば、必ずしもそうとは言えないでしょう。

 確かに過去の作品をTVerやFODで無料配信すると、「それを配信視聴している時間は、放送中の春ドラマやFODの過去作を見てもらえない」というリスクが高まるのは当然。ただ、過去作のリストを見て、好きだった作品に思いをはせ、リクエストを考えてもらうことで、ドラマそのものへの関心を高め、視聴時間を増やすことが期待できます。

 たとえば、ドラマから離れがちだった人が過去作のリストを見て、「ひさびさに見たいな」とFODで探して見る。あるいは、「今のドラマはどうなのかな」と思って放送を見るなどのチャンスが発生するでしょう。

 つまり、過去作のリストを見てもらった時点でリクエスト企画のメリットが発生し、さらにリクエストを考えてもらえたら、そのメリットが大きくなっていくということ。実際に再放送や無料配信される作品数は限られているため、リクエストしても選ばれない人のほうが多くなりそうですが、それでも「フジテレビのドラマ」というテーマで盛り上がってもらうことに意義があるのでしょう。

 さらにそのメリットは、「ドラマのフジテレビ」というイメージの浸透にもつながっていきます。

現在フジテレビで放送されているドラマは、伝統のある月曜21時台と木曜22時台に加えて、「攻めた作品が多い」と言われるカンテレ制作の月曜22時台、東海テレビ制作の土曜23時台『土ドラ』。さらに、昨春に水曜22時台、昨秋に火曜24時台の『火曜ACTION!』、今春にカンテレ制作の火曜23時台『火ドラ★イレブン』とドラマ枠が次々に新設され、その他にもFODのオリジナルドラマも放送されるなど、民放断トツの作品数を誇ります。

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