「最初から僕は、絶対日本語で勝負しようと決めていた」と語るKさん

Kさんにとって忘れられない日本語での「間違い」とは……

忘れられない日本語での「間違い」

 母語に置き換えることなしに外国語を身につける。そのすごさに軽くショックを受けながらインタビューを続ける。つらさや困難はなかったのだろうか。Kさん、ありましたよね?

「うーん、当時はニキビが出てたり肌荒れもしてたから、もしかしたらストレスはあったかもしれないです。でも、言葉が原因なのかホームシックだったからなのか、その辺は分からないな。言葉を覚える辛さより、一日一日を乗り越える大変さのほうが大きかった気がしますね。

 さっき、初めての番組はラジオの生放送だったという話をしましたけど、今でも覚えているのはデビューの頃、ある音楽番組に出させてもらった時のことです。放送前のリハーサルで、多分時間の関係もあったと思うんですが、司会者の方が、用意されていた最初の質問を飛ばして、僕に2個目か3個目の質問をしたんです。でも僕は分からなくて、1個目の質問に対しての答えを言っちゃったんです。周りからちょっとクスクス笑う声が聞こえてきて、あ、もしかしたら今俺違うやつ答えたのかな、と思ったんです。あとで分かったんですけどね」

 間違えて笑われる。外国語を使う時、一番気になることだ。Kさんはどうだったのだろう。

「僕の性格なのかもしれないですけど、全然気にならなかったですね。間違えることに対して素直っていうか、足りないところがあるってことはもっと埋める場所がある、伸びしろしかないってことだと思っていたし、そもそも人と喋るのがすごく好きだったので、間違えるのが怖いとも思ってなかったです。

 それに、笑われるってむしろ、相手との距離を縮めるチャンスなんですよ。たとえば外国人の方が『僕の荷物どこですか』って言いたくて『僕のおむつどこですか』って言ったら、反射的にくすってなりますよね。別にバカにしているんじゃなくて。そこできゅっと距離が縮まる。絶対そうだと思うんです。会話で生まれる笑いって、距離を縮めるきっかけになるんですよ。だから僕も全然恥ずかしいとは思わなかった。だってまだ『日本語一歳』なんだもん。できなくて当たり前だし、そもそも笑われたり相手を笑かしたりっていうのがコミュニケーションなので」

 できなくて当たり前という気持ちは、持とうとして持てるものではないような気がする。発音が悪くて聞き返されたらバツが悪い、恥ずかしいとつい思ってしまうのではないだろうか。そのあたりも聞いてみると、

「波があると思うんです。僕も1年、2年と日本で過ごしているうちに『日本語上手いね』って言われるようになって、そうすると『自分、結構できるんだな』って勘違いしちゃうんですよ。そういう時に何か言われたりすると、やっぱりちょっと恥ずかしいと思ったことはありますね。

 でも、日本人でも間違えることもありますよね? 会話ってやりとりだから、怒ったり怒られたり、笑ったり笑われたりっていうのが普通だと思うんです。間違えるのもコミュニケーションの一環って考えると、むしろ全然ありなのかなという気がします」

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