「最初から僕は、絶対日本語で勝負しようと決めていた」と語るKさん
金浦空港では日本語で話しかけられる
〈最初から僕は、絶対日本語で勝負しようと決めていた〉
Kさんはインタビューの冒頭でそうおっしゃっていた。絶対。その強い意思はどこから生まれたのだろう。
「沖縄出身、大阪出身、みんなどこかの出身ですよね。僕はソウル出身の人間としてJ-POPで勝負したかった。でも言葉が違うから、同じ土俵に立つために日本語を覚えた。夢を叶えるためにどうしても必要なことで、使えないとかできないっていうパターンは僕の中にはなかったんですよ。外国語っていう難関を突破しないと目標にたどり着かないなら、突破する以外方法はないですよね。
もし僕が韓国のアーティストを日本でデビューさせる、プロデュースすることになったら、大変かもしれないけれど自分と同じことをやらせると思います。外国語って、覚えること自体が夢じゃなくて、夢に近づくためのもので、手に入れるとすごく強い武器になる。だから、大変だけど、苦労じゃないよって伝えると思いますね」
Kさんのマネージャーさんが「彼は、相手へのツッコミとかタイミングとか、トークスキルがすごくあるんですよ」と話してくれる。話術は、それ自体が言語だ。相手の表情、雰囲気を読み取ってリアクションするのは、その言語に長けた人でないとできない。Kさんの「誰かと話すことが大好き」という人柄と洞察力も大いに作用しているのだろう。
「もう、日本語が自分のメインを飾っていて、元々話せていたハングルがどんどんこっちのほうに(と言って両手を端っこに)行ってるんですよね。いつも100%日本語だからか、韓国へ帰ると、金浦空港でタクシーの運転手さんが『安くできるよ』って必ず日本語で僕に言うんです。必ずですよ?(笑)
フィーリングというか、日本人っぽい何かが出てるんでしょうね。韓国料理とかグッズの店が多い新大久保を歩いてても、自分はもう完全に日本人としての雰囲気が出てるのかなあ、と思うことがあります。言葉って、面白いですよね」
(了。第1回から読む)
【プロフィール】K(ケイ)/1983年生まれ、韓国・ソウル市出身。2005年TBSドラマ「H2」の主題歌『over…』で日本デビュー。以来、ヒット曲を連発し、日本武道館や47都道府県ツアーも成功させる。ライブ以外にもMCやラジオDJ、ナレーターなど幅広く活動。妻はタレント・関根麻里さん。
◆取材・文 北村浩子(きたむら・ひろこ)/日本語教師、ライター。FMヨコハマにて20年以上ニュースを担当し、本紹介番組「books A to Z」では2千冊近くの作品を取り上げた。雑誌に書評や著者インタビューを多数寄稿。
