スポーツ

大相撲「年寄株」の不透明な売買実態 「金銭等の授受」禁止なのに「売りました」と親方未亡人が証言、八角理事長も了承

公益法人としてのあり方が問われている(上写真中央が八角理事長)

公益法人としてのあり方が問われている(写真中央が八角理事長)

 横綱・照ノ富士をはじめ上位陣や注目力士が星を伸ばし、5月場所は満員御礼が続いた。しかし、盛り上がりの裏で大相撲は構造的な問題を抱えている。不透明な「年寄株」売買の実態に迫る──。

 年寄株「振分」の権利を、妙義龍関に譲渡されたようですが──という問いに“その女性”は、「はい、はい」と認める答えをした。“億単位のお金が動くと言われますが?”の質問に「いやいや、そんなことはないです」と返すも、金額を重ねて問うと、「まあまあ、通常のというか」と応じる。“通常”がいくらなのかを尋ねると、「昔みたいな(高額な)のは全然」と答えた。

 本場所中の5月22日、本誌『週刊ポスト』の直撃に答えたのは2019年12月に41歳で亡くなった元東関親方(元前頭・潮丸)の未亡人だ。その答えからは「年寄株」譲渡の実態が垣間見える。

 力士が引退後も親方として相撲協会に残るには、「八角」「陸奥」など105ある年寄株のいずれかを襲名しなくてはならない。しかし、2014年に70歳までの定年後再雇用が導入されて株が慢性的に不足する問題が生じ、「需給バランスが崩れ、譲渡に伴う金銭のやり取りの高額化が懸念されている」(協会関係者)という。結果、最近は人気力士が協会を去る例が続出している。

「元小結・松鳳山、元前頭・豊山、元小結・千代大龍、元関脇・逸ノ城らが廃業した。時津風部屋付きだった井筒親方(元関脇・豊ノ島)も、2019年に亡くなった元関脇・逆鉾の未亡人から『井筒』の権利を借りていたが、元・逆鉾の長女と結婚した現役力士の志摩ノ海の『井筒』継承が確定的となり、“椅子取りゲーム”に敗れるかたちで今年1月に退職した」(同前)

 年寄株の権利の行方は、国技の将来を支える人材が協会に残れるかを左右する重大な問題なのだ。そうしたなか、行方が注目されていた株のひとつが冒頭の「振分」だ。高砂一門の後援会関係者はこう話す。

「元・潮丸の未亡人が権利を持つ『振分』を巡っては、同じ高砂一門の九重親方(元大関・千代大海)なども千代大龍のために取得に動いたようだが、結局は一門外となる出羽海一門の境川部屋所属の妙義龍に渡ることに。廃業した元親方らはその後の5年は権利を持てるが、未亡人などの遺族では2年とも3年とも言われている期限が迫るなか、角界の慣習に沿って譲渡を急いだかたちです」

 年寄株の権利を持つ親方の未亡人が、株の譲渡に関わったとされるケースは過去にもあった。

「元前頭・隆の鶴は2013年12月に『田子ノ浦』を襲名したが、これは2012年2月に亡くなった元前頭・久島海の未亡人から取得した。もともとは師匠である元横綱・隆の里の『鳴戸』を継ぐつもりだったのが、権利を持つ元・隆の里の未亡人との関係がうまくいかなかったとされています」(若手親方)

 親方の死後などに行方が確定しない年寄株は表向き「協会預かり」になるものの、その実は協会員ではない未亡人ら遺族が権利を持つことが“公然の秘密”となってきたのだが、それを事実と認めたのが、元・潮丸未亡人の肉声というわけだ。

関連キーワード

関連記事

トピックス

中居正広氏の近況は(時事通信フォト)
反論を続ける中居正広氏に“体調不良説” 関係者が「確認事項などで連絡してもなかなか反応が得られない」と明かす
週刊ポスト
「地面師たち」からの獄中手記をスクープ入手
「全てを話せば当然、有罪となっていたでしょう」不起訴になった大物地面師が55億円詐欺「積水ハウス事件」の裏側を告白 浮かび上がった“本当の黒幕”の存在
週刊ポスト
大谷と真美子さんを支える「絶対的味方」の存在とは
《大谷翔平が“帰宅報告”投稿》真美子さん「娘のベビーカーを押して夫の試合観戦」…愛娘を抱いて夫婦を見守る「絶対的な味方」の存在
NEWSポストセブン
「お笑い米軍基地」が挑んだ新作コント「シュウダン・ジケツ」(撮影/西野嘉憲)
沖縄のコント集団「お笑い米軍基地」が戦後80年で世に問うた新作コント「シュウダン・ジケツ」にかける思い 主宰・まーちゃんが語る「戦争にツッコミを入れないと」
NEWSポストセブン
神谷宗幣氏(写真中央)が率いる参政党は参院選で大躍進した。東京選挙区でも塩入清香氏(右)が当選(2025年8月写真撮影:小川裕夫)
《午前8時の”異変”》躍進した「参政党」、選挙中に激しい応酬のあった支持者と反対派はどこへ?参院選後の初登院の様子をレポート
NEWSポストセブン
令和最強のグラビア女王・えなこ
令和最強のグラビア女王・えなこ 「表紙掲載」と「次の目標」への思いを語る
NEWSポストセブン
“地中海の楽園”マルタで公務員がコカインを使用していたことが発覚した(右の写真はサンプルです)
公務員のコカイン動画が大炎上…ワーホリ解禁の“地中海の楽園”マルタで蔓延する「ドラッグ地獄」の実態「ハードドラッグも規制がゆるい」
NEWSポストセブン
『週刊ポスト』8月4日発売号で撮り下ろしグラビアに挑戦
渡邊渚さん、撮り下ろしグラビアに挑戦「撮られることにも慣れてきたような気がします」、今後は執筆業に注力「この夏は色んなことを体験して、これから書く文章にも活かしたいです」
週刊ポスト
強制送還のためニノイ・アキノ国際空港に移送された渡辺優樹、小島智信両容疑者を乗せて飛行機の下に向かう車両(2023年撮影、時事通信フォト)
【ルフィの一味は実は反目し合っていた】広域強盗事件の裁判で明かされた「本当の関係」 日本の実行役に報酬を支払わなかったとのエピソードも
NEWSポストセブン
ブラジルの元バスケットボール選手が殺人未遂の疑いで逮捕された(SNSより、左は削除済み)
《35秒で61回殴打》ブラジル・元プロバスケ選手がエレベーターで恋人女性を絶え間なく殴り続け、顔面変形の大ケガを負わせる【防犯カメラが捉えた一部始終】
NEWSポストセブン
モンゴルを公式訪問された天皇皇后両陛下(2025年7月12日、撮影/横田紋子)
《麗しのロイヤルブルー》雅子さま、ファッションで示した現地への“敬意” 専門家が絶賛「ロイヤルファミリーとしての矜持を感じた」【軍地彩弓のファッションNEWS】
NEWSポストセブン
三原じゅん子氏に浮上した暴力団関係者との交遊疑惑(写真/共同通信社)
《党内からも退陣要求噴出》窮地の石破首相が恐れる閣僚スキャンダル 三原じゅん子・こども政策担当相に暴力団関係者との“交遊疑惑”発覚
週刊ポスト