横綱・大関経験者も「年寄株不足」で先行きは不透明

横綱・大関経験者も「年寄株不足」で先行きは不透明

「御礼」という感じ

 年寄株売買はバブル期に相場が数億円まで高騰し、株取得資金の申告漏れまで発覚した。それゆえ、2014年の公益財団法人化の際に定款に〈何人も、年寄名跡の襲名及び年寄名跡を襲名する者の推薦に関して金銭等の授受をしてはならない〉と明記され、売買が禁止された。

 しかし、元・潮丸の未亡人は金銭のやり取りを認めたうえで、八角理事長(元横綱・北勝海)も了承していると話したのだ。八角理事長は協会トップであり、元・潮丸の東関部屋が属した高砂一門の統帥でもある。年寄株は5つある一門の利益代表を選出する理事選での貴重な“1票”でもあり、一門のなかで譲渡されていくのが基本とされてきたが、今回は出羽海一門へ“流出”している。

 以下は直撃の数日後に「改めて説明したい」との未亡人の申し出を受けての一問一答である。

──妙義龍への譲渡は八角理事長も承諾した?
「もちろんです。みなさんの承諾がないと私も動きません」

── 一門の株が減ると理事選への影響もある。
「高砂一門としては部屋も関取も少なくなっている。理事選の票のことはわかりませんが、他の一門との協力が必要なんだろうなとは想像します」

── 一門外に譲ったほうが値段は高くなるのでは。
「お話はいくつかありました。周囲からお金の話があるよと言われていたが、実際にはそんなことはありませんでした」

──同じ一門の九重部屋の千代大龍に譲るというのは考えなかった?
「千代大龍くんはもともと(協会に)残る気があまりなかったと聞いていました。年寄株をどうするかで、一番大きかったのは亡くなった親方が誰を尊敬していたかということ。今の時代は他の一門とも連携しながらやっている。そういうなかで境川親方(元小結・両国)からのお話があった。うちの親方が尊敬していた方だし、八角理事長を応援してくださっていた。丁寧なご挨拶をいただいたので決断し、理事長に報告しました」

──協会から「売買するな」と言われていない?
「それについては報告(の必要)もないし、“お互い納得しているかが大切だ”ということでした」

──定款で売買は禁じられています。
「そうですね……。そういう意味では『御礼』という感じですよね。今はそういうような金額しか動いていない」

── 一億単位とも言われる。
「そこまでは絶対にいかないと思う。(「振分」株の)具体的な金額はお話しできないですが、今は(億は)無理でしょう」

──最終的にはあなたの判断だった?
「はっきり言って私に任されるというのは、かなり荷が重かった。でも妙義龍さんとも食事をしたりして人柄もわかり、同じ兵庫生まれということで頑張ってほしいと思うようになりました」

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