国内

【間もなく公判へ】山上徹也被告を「山神様」と神格化する動きと、2世たちの「気持ちが分かってしまう」苦悩

送検のため奈良西署を出る山上徹也容疑者(写真/時事通信フォト)

安倍元首相が殺害された銃撃事件で起訴された、山上徹也被告(写真/時事通信フォト)

 安倍元首相が殺害された銃撃事件で起訴された、山上徹也被告(42)の公判前整理手続きが、6月12日から始まることが決まった。事件の真相は明らかになるのか。取材を続けているジャーナリストの鈴木エイト氏は、山上被告をめぐって世の中が複雑な状況にあると危惧している。鈴木氏の新刊『自民党の統一教会汚染2 山上徹也からの伝言』から抜粋してお届けする。

 * * *
 事件後、まず危惧したのは2世たちへの精神的な影響だった。統一教会の信仰を持っていた時期がないと思われる山上被告は、いわゆる”元2世信者”という括りには入らないとはいえ、問題教団による被害者の子ども「セカンドジェネレーション」、つまり2 次被害者として「2世問題」という側面があることは否定できない。

 事件後、聞こえてきたのは「山上容疑者の気持ちがわかってしまうことが辛い」という2世たちの声だった。当然ながら、殺人も厭わない銃撃という手段を採ったことは許されないことだ。とはいえ、彼が抱いた教団への恨みや憤りが痛いほどわかること、そして教団の体制保護に寄与してきた政治家を銃撃するといった社会の耳目を集める事件を起こさない限り、自分たちの苦しみはおろか存在すら認識されてこなかったこと。それまで様々な場所でそれぞれの”絶望”に直面してきた2世たちにとって、彼の境遇やその境遇を背景にとった行動は、どうしても他人事には思えないのだ。

 その「2世問題」視点からの報道が増すにつれ、容疑者への感情移入やSNSを含む情報氾濫、または無防備な状態でメディアから取材を受けることによって、多くの2世が精神的なダメージを被る恐れがあった。そのため、敢えてSNSから離れる選択をした2世もいる。私もそのようなアドバイスをしてきた。

 当事者ではなく取材する側として2世問題に長年向き合ってきた私ですら事件後の海外メディア対応の際に、山上徹也という人物が事件を起こした背景や、2世問題を説明しながら感情が高ぶり、涙が止まらなくなってしまうことが何度もあった。常に冷静な視点で見ることを心がけてきた“部外者”である私でさえ、無意識レベルで感情が大きく揺さぶられた。それだけに、当事者である2世たちが受けた衝撃や動揺の大きさは如何なるものであったか想像に難くない。

 彼を英雄視するような動きは実際にあり、社会の目を覚まさせてくれたヒーローとして捉える人も少なからず存在する。さらには「山神様」などと呼び神格化する声もあると聞く。

関連キーワード

関連記事

トピックス

初の海外公務を行う予定の愛子さま(写真/共同通信社 )
愛子さま、初の海外公務で11月にラオスへ、王室文化が浸透しているヨーロッパ諸国ではなく、アジアの内陸国が選ばれた理由 雅子さまにも通じる国際貢献への思い 
女性セブン
几帳面な字で獄中での生活や宇都宮氏への感謝を綴った、りりちゃんからの手紙
《深層レポート》「私人間やめたい」頂き女子りりちゃん、獄中からの手紙 足しげく面会に通う母親が明かした現在の様子
女性セブン
“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
《ママとパパはあなたを支える…》前田健太投手、別々で暮らす元女子アナ妻は夫の地元で地上120メートルの絶景バックに「ラグジュアリーな誕生日会の夜」
NEWSポストセブン
グリーンの縞柄のワンピースをお召しになった紀子さま(7月3日撮影、時事通信フォト)
《佳子さまと同じブランドでは?》紀子さま、万博で着用された“縞柄ワンピ”に専門家は「ウエストの部分が…」別物だと指摘【軍地彩弓のファッションNEWS】
NEWSポストセブン
一般家庭の洗濯物を勝手に撮影しSNSにアップする事例が散見されている(画像はイメージです)
干してある下着を勝手に撮影するSNSアカウントに批判殺到…弁護士は「プライバシー権侵害となる可能性」と指摘
NEWSポストセブン
亡くなった米ポルノ女優カイリー・ペイジさん(インスタグラムより)
《米ネトフリ出演女優に薬物死報道》部屋にはフェンタニル、麻薬の器具、複数男性との行為写真…相次ぐ悲報に批判高まる〈地球上で最悪の物質〉〈毎日200人超の米国人が命を落とす〉
NEWSポストセブン
和久井学被告が抱えていた恐ろしいほどの“復讐心”
「プラトニックな関係ならいいよ」和久井被告(52)が告白したキャバクラ経営被害女性からの“返答” 月収20〜30万円、実家暮らしの被告人が「結婚を疑わなかった理由」【新宿タワマン殺人・公判】
NEWSポストセブン
山下市郎容疑者(41)はなぜ凶行に走ったのか。その背景には男の”暴力性”や”執着心”があった
「あいつは俺の推し。あんな女、ほかにはいない」山下市郎容疑者の被害者への“ガチ恋”が強烈な殺意に変わった背景〈キレ癖、暴力性、執着心〉【浜松市ガールズバー刺殺】
NEWSポストセブン
英国の大学に通う中国人の留学生が性的暴行の罪で有罪に
「意識が朦朧とした女性が『STOP(やめて)』と抵抗して…」陪審員が涙した“英国史上最悪のレイプ犯の証拠動画”の存在《中国人留学生被告に終身刑言い渡し》
NEWSポストセブン
橋本環奈と中川大志が結婚へ
《橋本環奈と中川大志が結婚へ》破局説流れるなかでのプロポーズに「涙のYES」 “3億円マンション”で育んだ居心地の良い暮らし
NEWSポストセブン
10年に及ぶ山口組分裂抗争は終結したが…(司忍組長。時事通信フォト)
【全国のヤクザが司忍組長に暑中見舞い】六代目山口組が進める「平和共存外交」の全貌 抗争終結宣言も駅には多数の警官が厳重警戒
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《前所属事務所代表も困惑》遠野なぎこの安否がわからない…「親族にも電話が繋がらない」「警察から連絡はない」遺体が発見された部屋は「近いうちに特殊清掃が入る予定」
NEWSポストセブン